恋の端



僕が僕の何かを失うための言葉を連ねるから

きみがきみの何かを失うためにそれを拾って

さあ、どれを?

お好きなものを

まるで奪うかのごとくに捨てて

あたかも奪われるかのように壊して

ねえ、どれを?

食い潰すことも好まずに

何を得ることも証とせず

ただ失うための恋のつま

他には何もいらないと

全て捨てるなんて到底できないことは

百も承知で

ひとつさえ失わなくては証になれない言葉たち

なくすばかりの詩のつま

強がるために拾い上げてよ

他には何もいらないと


夕焼け雲がつるり

ジャングルジムのてっぺんで腰をおろして

逆立ちまでしてみせる度胸はないよ

少年の僕が

ブランコに憧憬を乗せて

見事に一回転してしまうのを待っている

恋の端なんて

拾うはしから取り落とす

仕方なしに視界を高くして

シーソーを見下ろすことはできても

雲までの距離は大差ないね

日が沈んでしまえば

すごすごと退散しなきゃいけないことが

少しばかり悔しい

憧憬を置き去りにしてしまっても

そろそろいい頃合いかもしれないけれど

やっぱり

ちょっと忍びないね


僕が僕の憧憬を預けるための言葉を捧げるから

きみはずっとそれを返さないつもりで頷いて

本当はもう

それは手元にはないのだけれど

何も置かれていない手のひらを差し出すから

気づかないふりで奪い取って


夕焼け雲がつるり

いつかとは違う形で

ジャングルジムは寂しげで

シーソーはいつの間にかなくなって

ブランコの上には誰もいないし

何も置かれてはいないけれど

僕の失うものにきみが失うものを重ねてくれるのなら

きっと揺れる




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