この感情に名前をあげましょう
香月 詠凪
1章 桜はとっくに散っている
桜はとっくに散っている
友達に彼氏が出来た。別に焦ってなんかいないし、友達に置いていかれた気分にもなっていない。
むしろこの状況の中でも危機感のない自分に、おいおい大丈夫かよと思ってしまう。
私は19年間、恋人がいたことはない。
今どき結構私みたいな子は多い気がする。
焦ってないと言えば嘘になるけど、危機感みたいなものはない。
だけど、今回はちょっと別。
「沙生も早く彼氏見つけなよー」
私と同じく19年間恋人のいなかった友人の奈穂に彼氏が出来た。
「うん、頑張るね」
奈穂は大学一年生の頃からの友人だ。 私と同じで、19年間恋人が居たことがない奈穂は、私の中では結構特別だった。
それに、奈穂はちょっとアホが入っているけれど凄くいい子だ。
だから、この子にまだ彼氏出来ないなら、私も出来なくて平気だろう。なんて思っていた。
なのに、なのに。
完全に、置いていかれた。
「沙生は可愛いのになんで彼氏できないんだろうね」
可愛いかは別として、彼氏が出来ない理由は私が一番知りたい。
今までの人生でいいなって、思う人は何人かいた。
でも、付き合いたいとか、この人と一生共に過ごしたいかと問われたら否だった。
とにかく何かが違うのだ。よく分かんないけど。
こんなんじゃ一生、好きな人も恋人も出来ないだろうな。
思い返せば、私は幼い頃からモテた。男の子には何度も告白された。
でも、誰一人として私の心をときめかせてはくれなかった。
いつか運命の王子様に出逢うのだと、中学生までは本気で信じていた。
だけど、高校生で世の男女の現実を知った。
高校で付き合っている人達は、運命とかそういう次元じゃなくて、彼氏彼女がいるブランド感に浸っていた。
気持ち悪かった。
そんな優越感になんの意味があるのか、私には理解出来なかった。
私の考える恋愛とは、運命の人と出逢い当然のように二人は恋に落ちる。おとぎ話のような恋愛がしたかった。
でも、私に告白して来る男達は前者だった。
一度聞いてみたことがある
「私のどこが好きなの?」
「え、顔」
一度も話したことのない男子だった。 まあ、そりゃ話したことがなくて、告白してくる理由なんて顔以外何があるんだって思うけど。
高校生の私は絶望した。
高校での恋愛は諦めよう。きっと大学生になったら素敵な出会いがあるはず。
そう思っていたのに。
素敵な出会いか。そんなものコロコロ転がっているはずは無い。
そもそも高校で無ければ大学でなんてもっと無い。
大学生になれば恋人が出来るってよく聞くけれど、それって誰でも良い人達の事なんだろうな。
私は19歳になってもまだ、おとぎ話のような恋愛に憧れている。
心を許せる恋人は欲しいと思うけど、誰でもいいって訳じゃない。
やっぱり、本当に好きな人と付き合いたいのだ。
私は四度目の桜が咲く頃までに運命の人に出会えるのだろうか。
ぼんやり禿げた桜の木を見て思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます