No.61『蛇足の座をかけて』
店員「3名でお待ちの……、フ、フリーザ様ー」
根岸「これ割と有名なコピペだろ。いまだにこういうの書くやついるんだな」
佐原「さあ、行きますよ! ザーボンさん! ドドリアさん!」
根岸「……お前かよ」
佐原「どうしました、何を呆けているのですか」
根岸「ふん、俺は貴様の命令などきかん」
佐原「……ほう?」
根岸「ザーボン? ドドリア? そんなやつらはもういないぜ。何より、俺らは二人連れだ」
佐原「ほほほ、これは盲点でしたね。では行きましょうか、ドドボンさん」
根岸「誰だー」
佐原「はやくしなさい、店員さんが困っているでしょう。それともこの私を怒らせたいのですか?」
根岸「……俺はもう、貴様には屈しない!」
佐原「ほぉう? ここまできて、反旗を翻すというのですか」
根岸「貴様が一人になった、今だからこそだ。普段は護衛に囲まれて、手出しができないからな」
佐原「ふっ、ふははははは!」
根岸「何がおかしい!」
佐原「本来、私には護衛など必要ないのですよ」
根岸「なんだと?」
佐原「どうしてもと言うから護衛させてあげているだけに過ぎません。私は、その誰よりも強いのですから、必要ないでしょう?」
根岸「ふざけたことを……」
佐原「試してみますか? まあ、大方あなたの昔の仲間のように―――」
根岸「くっ、貴様ぁぁぁ!」
佐原「なんですか、その遅い拳は」
店員「いいからはやくしてください」
根岸「あ、はい」
佐原「……怒りに任せた拳では、ヤツは倒せん」
根岸「っ! その声は! 師匠!」
佐原「心を穏やかにし、魂の音に耳を澄ませば―――地球屋が……」
根岸「見えた、水のひとしずく!」
佐原「ん」
根岸「ん」
佐原「バロン?」
根岸「師匠?」
佐原「……うむ、儂が師匠バロンじゃ!」
根岸「誰だー」
佐原「ふん、儂の顔を忘れたというのか」
根岸「なにっ! ぐっ、む、胸が苦しい……」
佐原「脳が忘れても、身体は痛みを覚えているようだな。いいか、それが恋だ!」
根岸「これが……恋……!?」
佐原「胸に刻まれた北斗七星の傷跡は、七つの失恋の思い出だ」
根岸「貴様は……、一体……」
佐原「貴様の、父だ」
根岸「嘘だーーーー!」
佐原「コーホー」
店員「いいからはやくしろ」
根岸「あ、はい」
佐原「コーホー」
根岸「それはウォーズマンだろ。ほら、行くぞ、席に案内してもらおう」
佐原「……どうやら、俺はここまでみたいだ」
根岸「なにっ」
佐原「来たぜ、追っ手が」
根岸「奴らが!?」
佐原「ああ、ここは俺に任せて、お前は先に行け、根岸」
根岸「……いいのか? お前だって」
佐原「言うな。俺は敗者さ。恋に破れ、お前にも敗れ、パンツもやぶれてビリビリだ」
根岸「なんでパンツまで破れてるんだ」
佐原「さあ行け根岸! お前が行かないで、誰が俺たちの席を取っとくというんだ!」
根岸「佐原……死ぬなよ」
佐原「ああ、すぐにお前の後を追うよ。なに、楽勝さ、便意なんて」
根岸「トイレ行きたいのか。今理解したわ」
佐原「ああ、こないだは負けたが、今日は負ける気がしねぇ!」
根岸「負けたのかよ」
佐原「そのときのパンツがこれだ! やぶけてビリビリだ!」
根岸「脱ぐな」
佐原「あの頃の俺とは違うってところ、見せてやるぜ!」
根岸「……ほう、あの頃のガキが、大きくなったものだ」
佐原「……師匠……」
根岸「……大きくなったものだ」
佐原「……どこを見て言っている!」
根岸「ふははは!」
佐原「だが今は、貴様の相手をしている暇はない!」
根岸「ほう、家族の仇を目の前にして、それよりも優先するものがあるというのか」
佐原「ある! それが、友情というやつだ!」
根岸「便意ではなくてか」
佐原「便意もだ!」
根岸「ガキが、成長したじゃないか。いいだろう、今殺すには惜しい。この場は儂に任せるがいい」
佐原「あんたが、俺たちの味方をしようというのか! 何を企んでいる!」
根岸「味方? 勘違いするなよ小僧、今この場だけ、貴様を助けてやろうというだけの話だ」
佐原「……任せて、いいのか? 師匠」
根岸「ふ、まだ儂を師匠と呼んでくれるのか……。行けぃ! 我らの未来を、席を頼んだぞ!」
佐原「師匠ー!」
根岸「……」
佐原「……」
根岸「行ったか。……ごふっ。……どうやらこの体も、長くはもたんな……」
佐原「そんなことだろうと思ったぜ」
根岸「小僧! なぜ戻ってきた!」
佐原「便意は、あんた一人の手には追えねぇよ。俺も行く」
根岸「ふん、足でまといになるなよ?」
佐原「ああ、もうあの頃の俺じゃないんだぜ、師匠」
根岸「……知っておるわ」
佐原「さあ、行くぜ師匠! トイレに!」
店員「いいからさっさと動け」
暗転
佐原「師匠、俺はあんたを超える!」
根岸「かかってくるがいい、小僧!」
佐原「個室の座をかけて、いざ!」
閉幕
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