No.50『魔女』

根岸「風呂上りの夜風は気持ちいいなー」


コンコン


佐原「こんばんは、魔女です」


根岸「窓の外から!? ここ6階なんだけど」


佐原「まあ細かいことは気にしないで。 おじゃましますよ」


根岸「っていうか魔女って何だ、のっけから意味がわからない。 おっさんじゃないか」


佐原「せめてお兄さんでどうかひとつ」


根岸「はぁ」


佐原「もしくはお兄ちゃんかお兄様でもいいぞ!兄君や兄チャマでもいい!いやむしろそう呼んでくれ!是非に!」


根岸「なんだこの人気持ち悪い……」


佐原「って男に兄チャマとか呼ばれても嬉しくともなんともないわー!」


根岸「いきなりキレた。なんなんだこいつ」


佐原「魔女です」


根岸「そうか、そうだった。 いや違う、なんか違う。魔女じゃないだろう」


佐原「何も違わない。 豆餅買わない」


根岸「豆餅はともかく。 え、なに、女の人?」


佐原「このポップでキュートでチャーミングな運命線のどこを見れば俺が女に見えるというのだね!」


根岸「いや手相は知らんけども、やっぱりおっさんだよな、どう見ても」


佐原「ほら見てこの結婚線」


根岸「知らねって」


佐原「無いの」


根岸「無いのかよ結婚線。 つーかなんだ、何がどうなるとお前が魔女なんだ」


佐原「なにもどうもしなくても魔女だよ? デーモン小暮が悪魔なのと一緒」


根岸「閣下はいいよ、でもお前はダメだ。 男じゃん、魔女じゃないじゃん」


佐原「ピーコだって男じゃん」


根岸「ピーコは男だよ」


佐原「パーコは女だけど」


根岸「パーコって誰だよ」


佐原「パーマン3号」


根岸「あぁパー子……。いやパー子は関係ない」


佐原「じゃあなんなのさー、何が魔女じゃないっていうのさー」


根岸「全部魔女じゃないというか……」


佐原「イッヒッヒ、ねるねるねるねはヒッヒッ」


根岸「そんな笑い方とかねるねるねるねは問題じゃなくて、ええと」


佐原「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは、俺だー!」


根岸「うるせえ。 あぁ、あれだ、魔女って文字で書いてみ」


佐原「マジョ」


根岸「おおう。 か、漢字で」


佐原「魔が書けない」


根岸「ぬうう」


佐原「なんだかよくわからないけどさ、キミが感じてる違和感なんてきっと些細なことだよ」


根岸「いや些細じゃないと思うんだけど……」


佐原「そんなことはいいから見てみ、この生命線」


根岸「いや手相のほうが今はどうでもいい」


佐原「無いの」


根岸「生命線も無いのかよ、つるつるじゃん手の平」


佐原「消えちゃった、手相。 という魔法」


根岸「なんて地味な魔法!」





閉幕

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