No.55『省けなかったよ……』
佐原「時代はエコじゃよ根岸くん!」
根岸「どうしたんですか佐原博士、今更」
佐原「今更とか言うなし!わしはエコに目覚めたのじゃよ!」
根岸「博士の口調って、語尾に「じゃ」つきましたっけ」
佐原「つけたほうが博士っぽいかなって思って」
根岸「そうですか」
佐原「で、エコじゃよ根岸くん!時代はエコを求めておる!」
根岸「そうですね」
佐原「反応がクールじゃのぅ」
根岸「省エネです」
佐原「おお、さっそくエコじゃな」
根岸「ええ」
佐原「わしも負けてはおれんな!」
根岸「博士の一人称って、「わし」でしたっけ」
佐原「そのほうが博士っぽいかなって思って」
根岸「そうですか」
佐原「で、だ、根岸くん、まずエコに必要なものは何か!」
根岸「なんでしょうね」
佐原「ちょっと反応クールすぎないかね」
根岸「クールビズです」
佐原「おお、夏らしいエコじゃな!」
根岸「そうですね」
佐原「エコとは!」
根岸「はい」
佐原「無駄を省くコトじゃ!」
根岸「そうですね」
佐原「で、発明してみました」
根岸「今日は何を?」
佐原「無駄省き機ー」
根岸「わー、オチが見えるー」
佐原「なんとこの機械を作動させると、世の中のありとあらゆる無駄が省けるのじゃ!」
根岸「そうですか……」
佐原「ふふ、根岸くんはどうやらこれを作動させることで我々という無駄な存在が消えると思っておるな?」
根岸「自分で言うと悲しいですね、ええまあ、そういうオチかなーと」
佐原「ふふん、毎度毎度そうはいかん、今回は先手を打っておいたのじゃ」
根岸「ほう」
佐原「無駄省き機から、無駄を省く機能を省いておいた」
根岸「……」
佐原「これで安心!」
根岸「……じゃあ何なんですかコレ」
佐原「機械、あ、メカでもいいよ」
根岸「何の機械なんですか」
佐原「無駄の無い機械」
根岸「何に対して無駄が無いんですか……」
佐原「無駄なことに対して一切の無駄が無い機械!」
根岸「つまり、純度100パーのゴミじゃないですか!」
佐原「根岸くん、わしがただのゴミを作ると思っているのかね」
根岸「佐原博士ならまあ、ありえます」
佐原「ひどいなぁ、確かにコレは役に立たないゴミかもしれん」
根岸「かもしれん、っていうかゴミですよ」
佐原「だが、視点を変えてみてみるのじゃ」
根岸「ええ、ゴミですね」
佐原「クールすぎる!もうちょっと相手して!」
根岸「努力してみます」
佐原「視点を変えてみればほら、無駄という機能を極限まで突き詰めた機械なのじゃよ」
根岸「……はい?」
佐原「機能美において、これにまさる機械は無いのじゃ!」
根岸「……えーと」
佐原「わかってくれたかね、これがただのゴミではないことを」
根岸「ぽいっ」
佐原「ああっ!捨てたー!機能美の結晶である芸術ともいえる機械を!」
根岸「博士、視点を変えてみましょう。無駄を極限まで突き詰めた機械を捨てたんです」
佐原「……うん」
根岸「純度100パーの無駄というものを、処理できたのです」
佐原「おお!つまりは無駄を省いたのか!なるほどさすがは根岸くん!」
根岸「無駄な時間だったなー」
閉幕
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