No.9『食料を低温で保存する長方形』

佐原「できたぞ根岸くん、今世紀最初の新発明じゃ!」


根岸「21世紀になってから17年も何してたんですか」


佐原「桃鉄」


根岸「17年も……」


佐原「桃鉄17年って言葉だけだと、すごい短く感じるよね」


根岸「……そうですね」


佐原「そんな空白の17年は置いといて、今回の発明品はコレじゃ! でーん!」


根岸「箱?」


佐原「根岸くん、食べ物の保存で困ってはおらんかね。 食べ物は置いておくとすぐダメになる、そんなときにこの箱の中にいれておくと、低い温度で長期間保存が可能に―――」


根岸「冷蔵庫じゃないですか」


佐原「ワシのフリーズ保存できちゃうくんアルファを、そんなダサい名前で呼ばないでいただけるかね? なーんじゃ、れーぞーことか、ダサっ、ぷふー!」


根岸「いや、だって、低温保存する、箱ですよね?」


佐原「そうじゃよ」


根岸「冷蔵庫じゃん」


佐原「じゃから、冷え冷えのんびり食べようねボックスだと言っておろうが」


根岸「言ってない。さっきと名前違うじゃないですか」


佐原「ワシのクーラーボックスにケチをつけるか!」


根岸「それはまた別のモノです」


佐原「なんじゃもう、これがあればいつでも冷たい飲み物とか飲めるんじゃぞ!」


根岸「いやだから、冷蔵庫でしょ?」


佐原「ワシはそんなもん知らん! 今世紀になってから見たこともない!」


根岸「……台所にある、四角い大きい箱って、なんでしたっけ」


佐原「冷蔵庫じゃろ?」


根岸「知ってんじゃん!」


佐原「知っとるよー、あれじゃろ、でかくて、表面に磁石がくっつく、アレじゃろ?」


根岸「博士の今回の発明品と、被ってるんですよ」


佐原「ははは、ワシのこの保存ちゃんには磁石はくっつかんぞ」


根岸「冷蔵庫以下じゃないですか……」


佐原「バカを言うな、あんな場所をとるだけのものと一緒にしてもらっては困る。見ろ、こうやって中に食材をいれることができるんじゃぞ! ぱかぱかーっと」


根岸「冷蔵庫もそうですよ」


佐原「………………?」


根岸「なんで不思議そうな顔をするんですか。冷蔵庫も同じだって言ってるんです。中に食べ物をいれて、長期保存できるんです」


佐原「パクられた!」


根岸「どう考えても後に作ったのは博士でしょう」


佐原「じゃ、じゃが、このひえる君には様々な追加機能が付いておるのじゃ」


根岸「どうでもいいんですが名前をそろそろ統一してください」


佐原「そのレイズナーとかいうものには無いであろう機能が盛りだくさんじゃ!」


根岸「冷蔵庫です」


佐原「レーザードライフルとか、ついて無いじゃろ!?」


根岸「むしろレイズナーの武装ですよねそれ。そんなもん付けちゃったんですか、博士の冷蔵庫」


佐原「食べ物を保存するため、外敵から身を守る必要があった」


根岸「必要……あるかなぁ。―――他にはどんな余計な機能を付けちゃったんですか?」


佐原「自爆装置」


根岸「冷蔵庫に……」


佐原「自爆はロマンじゃからな、すごい大事」


根岸「いつ使うんですか」


佐原「そりゃあ、食べ物を守りきれないときに決まってるじゃろう」


根岸「……冷蔵庫ですよね?」


佐原「冷蔵庫ではないと言っておるじゃろ!」


根岸「いやまあ、もう冷蔵庫じゃ無いのはわかるんですけどね」


佐原「他にもいろいろついておるぞー、ひげ剃りとかー」


根岸「固定されてる!? でかいよ、使いづらいよ、ヒゲ剃りにくいよ」


佐原「缶切りとかー」


根岸「……ひげ剃りもだけど、なんで冷蔵庫にくっつけちゃったんですか……」


佐原「あと自爆装置」


根岸「さっき聞きましたそれ」


佐原「もういっこついてる」


根岸「2個め!」


佐原「ロマンじゃからな」


根岸「不必要なロマンだなぁ」


佐原「ロマンに実用性を求めちゃいかん。冬場の女子高生の生足みたいなもんじゃよ」


根岸「寒そうですよねアレ」


佐原「スカートの下にジャージ履いてても、ジャージも何故か途中で切られておるしの」


根岸「ちなみに博士、ちょっと質問があるんですが」


佐原「はいはい、なんでもどうぞ。フェチ以外ならなんでも答えるよ」


根岸「これ、コンセントないですよね?」


佐原「ああ、上部についてるソーラーパネルで発電するのじゃよ。エコじゃろう?」


根岸「……屋外に置くんですか?」


佐原「家の中にこんなデカイもの置いたら邪魔じゃろう! アホか!」


根岸「えぇ……。だって、食べ物いれるんですよね?」


佐原「そうじゃよ? 百聞は一見に如かず、まあ、使ってみるとしよう。根岸くん、なんか食べ物もってない?」


根岸「今日のおやつの焼きプリンがあります」


佐原「ほい、じゃあそれを入れて……」


……


根岸「というわけで」


佐原「というわけで、外じゃな」


根岸「博士、ちょっと聞きたいんですが」


佐原「はいはい」


根岸「なんであの冷蔵庫、二足歩行してるんですか」


佐原「そりゃ、食べ物を守るためじゃよ。やばい時に逃げられないと困るじゃろ?」


根岸「さっき入れたおやつの焼きプリンは―――」


佐原「しっかり保存されておるよ、安心しなさい」


根岸「食べたい時は、どうやって取り出すんですか」


佐原「そりゃ、開けて取り出すんじゃよ」


根岸「……動いてますよ? 歩き回ってますよ?」


佐原「なんじゃ、根岸くんの意気地なし、ちょっと開けるだけじゃろ、ほらこう―――」


根岸「撃って来ましたね、冷蔵庫が。レーザードライフルとか付けるから」


佐原「あっぶねぇ! なにあいつ、生みの親に銃向けるとか、なんてひどい子じゃ!」


根岸「ロボット三原則とか、そういうセーフティ機能はつけてないんですか? おもいっきり博士に向けて発砲してましたけど」


佐原「ない。あの子にあるのは、中のものを保存するという、それだけの命令じゃ。―――悲しい子なんじゃよ」


根岸「焼きプリン……」


佐原「仕方ないのぅ、リモコンの緊急停止スイッチを押すとしよう。ぽちっとな」


根岸「お、止まった。あるんですね、そんなの。博士らしくもなく用意がいい」


佐原「そりゃあ、あるともさ」


根岸「これで安心して焼きプリンが取り出せますね」


佐原「しかも同時にセキュリティが働き、5秒後に自爆する」


根岸「……へ?」


佐原「2、1……」


根岸「焼きプリーン!!」


佐原「保存できぬくらいなら、名誉ある自爆。―――中の食べ物は守られたのじゃな……」


閉幕

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