2話 友情と恋心?
「ここに来ると落ち着く」
わずかに風が吹いているのがわかる。鳥や木々の音もすべて癒しだ。
「わかる気がする」
二人で柵に沿って歩く。
人口河川といったが、元々自然にあった川の周囲を管理しているので、川の支流を増やすために作られたわけじゃない。ゆるやかな堤防が作られていて、降りるための道を除いて柵が設けられている。
歩道ではサラリーマンや学校帰りの高校生たちが歩いていた。
「中学生のときよくここに来ていたよ。いいときもわるいときも、気持ちを入れ換えることができた」
昔語りの口調になっていることに気づく。岸野さんに目線を配した。岸野さんは、何? という顔をして表情を和らげた。
「会っていたかもしれないね」
私がそうつぶやき、左腕をフェンスの上に乗せた。ちょっと汚れるかもしれないと思ったが、もう付けてしまった。後で払っておこう。
自分の記憶かどうかすらもわからないが、かすかに記憶がある。
「だいじょうぶなんだよね?」
そのとき話していたことと関係あると思う。輪郭だけは思い浮かぶのだが、内容がわからない。だが私は曖昧な笑みを浮かべ、
「うん」
と返事する。すると岸野さんは、何かを確信した表情をしたが、私にはわからない。けど、昔の私とは違い、今に求めていたものがある気がした。
「そういえば、
「え?」
「なんで名前を知ってるの?」
「名前は知らなかった。保健室に連れた後、放課後に話しかけられたんだよ」
体調不良で保健室で寝たときのことか。
ということは、ソウ君は私のことを気遣っていた。照れくさくて頬が熱くなる。
「いや、そもそも友情の延長線上に恋があるかなんて知らないから!」
抑え気味に言ったが、語気が強まった。
俗にいうデレツンというのか、それとも精神BLだと呼ばれたくないからか。すくなくとも、見た目は女だが……。
「恋しているかどうかは、聞いていないよ」
微笑みを崩さない岸野さん。どうやら、岸野さんのペースに呑みこまれたようだ。
「でもね、日暮君は菅原さんのこと気にかけているよ。菅原さんが倒れたとき、何人かから声をかけられたけれど、日暮君が一番あなたのこと、心配していたから」
胸の中がポカポカと温かくなる。ソウ君は、たまに必死になることあるからなあ。落ち着いているけれど、たまに積極的に出るし。
言葉を返すまでもなかった。自然と顔がほころんでいた。
「やっぱり好きなんじゃない」
表情を元に戻す。
確かに私はソウ君のことを尊敬している。けど恋愛感情がない。
「そうかな?」
苦笑いするつもりがまたしても、照れくさそうな笑い方になってしまった。
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