4話 あせる事(加筆)

「大学に行ったら、会う機会が減るんだよな……」

 行く大学が違えば当然、会う機会が減ってしまう。

「そうだね」

「友紀と会えなくなるな」

 ソウ君は俯きがちになった。軽く息が漏れている。ため息かもしれない。

「そんなことないよ。連絡取って、休日や長期休暇中に会えるじゃない」

 会えなくなっても、連絡を取る事はできる。

 言い方が少し不自然だったかもしれない。けれども中性的な喋り方の人が、いないわけではない。

 ソウ君は顔を上げた。心なしか、頬が少し紅くなっている。

「そうか。そうだよな」

 氷すら溶けるようなさわやかな笑顔を見せられる。思わずドキッとした。まだカップを持っていなくてよかった。

「いただきます」

 ソウ君は手の平を合わせた。Miraiサンドを手に取る。ぼくもそれに続き、手の平を合わせて、「いただきます」と言った。パンの香ばしい匂いがする。海鮮と野菜の組み合わせがうれしい。

 ぼくとソウ君は他愛のない話を続けた。学校で話すときと変わらない、ふつうの会話だった。



 帰ってからは、家にこもって勉強していた。俗に言う「おやつの時間」辺りに、それは起こった。

 何だろう……。下腹部に、真綿で締め付けられるようなやや強い痛みがある。そのまさかだった。トイレで確認すると、血が下着を汚していた。

 処理には30分もかかった。やっと終わり、ため息を吐いたが、気は落ち着かない。とても楽観できる状況じゃなかった。

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