序章 なぜかぼくは、ゆきになった
1. いつもと違った朝(土曜日)
1話 身に覚えのないこと 菅原友紀(改)
夢を見ていた。僕の母校である公立・
その子の顔はぼやけて見えないが、どこかで会った気がする。
彼女は素直そうで、周りの人たちにも恵まれている。だけど僕は、その夢を気分よく見ることができなかった。光が当たれば影が射すようにこの日々がいつまでも続くとは思えなかった。脆く崩れやすいものだ。
ゆっくりと目を開けた。カーテンを見ると、淡い光が漏れていた。寝起きだから、それでも少し眩しくて、軽く目を細めた。目が朝の光に慣れてくると、自然に瞼が開いていく。
僕は「夢」を見ていた。夢の女の子とはどこかで会ったことがある。そして彼女に対し、何かを伝えたい気持ちが残っていた。
ベッドから上体を起こした。黒くて長い糸状の束が、肩の辺りで軽く
「え……?」
有るはずのない物がある。
十数秒の沈黙が場を支配したが、しばらくすると、状況を察っし始める。落ち着こう。胸の鼓動が早いように思うけど、息をゆっくり吐いて、吸う。何がきっかけでこうなったのか。
誰かが、寝ている間にいたずらしたのではないか? それが最も普通の考えだと思うけれど、兄の優一は
そのほか、直近の記憶を思い出していった。けれども、心当たりがない。もしや、夢と関係があるのだろうか。夢が引き金になるというより、この現象が起きることで発生した要素だと思う。詳しいことは、今の段階では掘り下げられそうもないけれど。
ところで「僕」について簡単な説明をしたい。名前は
話を元に戻したい。夢か現実かを調べるのに最も簡単な方法。それは頬っぺたをつねること。少し痛いぐらいで。痛っ! 次に髪の毛の束を持ち、抜けない程度に弱い力で引っ張る。どうやらこの毛の束は、頭皮と繋がっているようで、自毛らしい……。
おそるおそる胸の膨らみにも触れようとした。けどもしかすると、
トイレに行ったとき、17年間連れ添ったパートナーが消えていたのには、さすがにショックを受けた。
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