第38話 Waking

瑛斗が気を失ってから2日経っていた。その間2人は交代交代で瑛斗の体拭いたりしていた。2人は瑛斗が目覚めるのを今か今かと待っている。


「いつ目覚めるんだろうね。2日もこのままでさ…。本当に死んで無いよね?」


それを聞いたアリスが寝ている瑛斗の胸に耳を当て心臓の音を確かめた。瑛斗の心臓はしっかりと動いていて、アリスはホッとした。


「大丈夫だよ。死んでないよ。とにかく待ってみよっか」


「うん…」


いつもやっている作業をし2人は部屋を後にし食事しに食堂へと向かって行った。食事が運ばれてくると2人は食事を始めた。瑛斗がいた時のような雰囲気は無く2人は無口で食事を進めていた。瑛斗は死んでなんかいないのに、なぜか勝手に死んだと2人は思ってしまっていたのだった。


食事を終えると2人はアリスの部屋に戻って行った。部屋に入り瑛斗を見るが瑛斗はまだ目を覚ましていなかった。


「まだ…起きてない。瑛斗…」


「仕方ないよ。起きるまで待とっか」


2人は瑛斗の両側にうつ伏せになり眠っている瑛斗を見ていた。見続けていても瑛斗は起きることは無かったが2人は瑛斗を見続けていた。葵が自分の顔を瑛斗に顔に近づけじっと葵は瑛斗を見ている。


「ねぇ…起きてよ、瑛斗…。私たち2人寂しいんだから…。早くこっちの世界に戻って来て…」


葵の目にうっすら涙が浮かび、そしてその涙が頬を伝い瑛斗の頬付近に落ちた。一粒、また一粒とその涙が落ちる。アリスはそれをじっと見る事しか出来なかった。アリスももらい泣きしそうになったがそれを堪えベッドから起き上がった。


「アオイちゃん!お風呂行こっか!お風呂入ったら気分も変わるよ」


「お風呂…うん、行こっか」


葵が力無さそうに起き上がりお風呂の後に着る着替えを持ってきた。アリスも着替えを持って来て、2人は浴室へ向かおうとしていた。


葵が部屋のドアを開け、外に出ようとした、その時アリスの後ろから何かが動く音がした。それに気づきアリスは後ろを振り向く。そこには、2人のことを見ている瑛斗がいたのだった。アリスは自分の目を疑い何度も目をこするが、それは夢なんかではなく現実だった。


「エイ…ト?エイト?」


アリスがそう言いながら瑛斗に近づく。葵もそれを見て驚いた表情を浮かべ、瑛斗に近づいて行った。瑛斗が2人を見て微笑み、嬉しそうな表情を浮かべていた。葵とアリスは着替えを放り投げ瑛斗の元へと向かう。


「瑛斗!やっと起きた…!ずっと待ってたんだからね!」


「エイト、エイト…!2日も起きずに…私たち寂しかったんだよ!エイト、おかえり」


2人の目に涙が浮かぶ。瑛斗は微笑み2人を見る。今までの悲しい想いが全て吹き飛び満面の笑みを2人は浮かべていた。泣いている2人を抱き寄せ瑛斗は2人の耳元で囁いた。


「ただいま!心配させちゃってごめんな」と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る