第19話 It's not over yet

敵兵に倒されてから、何時間経ったのかわからない。周りが真っ暗なためどこにいるのかなんとか一命を取り留めたのかもわからない。瑛斗のまぶたはまだ、開かずにいた。


瑛斗の耳に何か音が入って来た。ドアが開く音、誰かが歩き瑛斗の近くに来ているのわかる。そして瑛斗の隣に誰かがいる気配がした。そして話し声が聞こえる。


「エイト、起きる気配無いね。無理やり起こす?」


「うん…なんで1人で行ったんだろう…」


「アオイちゃん撃った事、恨んでたんじゃないかな?」


――葵…?俺の近くにあるのは葵なのか?それなら…俺は生きてるって事?


瑛斗はその2人の会話を聞くと、まぶたをゆっくりと開けていった。ボヤけていた視界がだんだんと晴れていき部屋の天井が視界に入ってくる。そして瑛斗の視界に、黒髪の少女が映る。


「あ…葵?」


「え?」


瑛斗の視界に映っていたのは幼馴染の葵。その近くにはアリスの姿もあった。瑛斗が名前を呼び葵が瑛斗を見ている。その目にはだんだんと涙が浮かんで来ていた。そして葵が泣きながら横になっている瑛斗に抱きついて来た。


「瑛斗〜!アリスちゃん瑛斗が意識取り戻したよ!!」


「え!本当?よかったね」


アリスも瑛斗がいるベッドに入って来た。瑛斗の両側には葵とアリスがいる。葵は涙を流しながらアリスは微笑みながら瑛斗を見ている。


「もう!瑛斗のバカ!なんで1人で敵国に行くのよ!勝手に喧嘩売って勝手に負けて…アリスちゃんが途中で気づいたからよかったけど…私、本当心配したんだからね!?」


「ごめんごめん…どうしても葵を撃った人がいる国のやつらが憎くて…ごめんな。心配させて」


「もうその事は忘れて。私は大丈夫だから…」


「けど、どうしても恨みが―― ……!」


突然、葵が瑛斗の唇にキスをした。葵の柔らかい唇が重なり、その暖かさを感じる事ができた。そして葵の体を引き寄せ体を密着させた。


「ごめんな、葵…俺の勝手な行動で…葵を泣かせちゃって…」


「大丈夫…!瑛斗が死ななかっただけよかった…」


2人が話しているとアリスが話しに割り込んで来た。


「本当間に合うか心配だったんだよ?私1人で全員倒したけど…。本当救えてよかった」


「アリスもごめんね。迷惑かけちゃって…お詫びにアリスにキスして――」


そう言う瑛斗の頬を葵がつねった。つねられた痛みで瑛斗は泣きそうになる。


「痛い痛い痛い!嘘だって葵!もう浮気はしないから!」


「次そんな事言ったら命はないと思ってね」


「さっき「死ななかっただけよかった」って言ってたよな!?それは嘘だったの?」


「そんな事言った覚えない。とりあえず浮気したら…ね?」


「わかったよ。しないよ。多分…」


瑛斗が「多分」を小声で言ったがそれは葵の耳にしっかりと届いていた。それを聞いて葵は再びつねる力を強めた。


「多分って何よ、多分って!絶対にだよ?」


「わかった!わかったから!痛いからつねるのはやめて!」


そんな2人のやりとりを微笑みながらアリスは見ていた。また嫉妬してしまうがその嫉妬は長くは続かず、すぐに消えた。逆に幸せになってほしいと思っていたのだった。


「ねぇ、久しぶりに3人で寝ない?」


アリスが2人にそう話しかける。


「そうだね。瑛斗は動いちゃいけないから、アリスちゃん、楽しい事しよ?」


「うん、しよっか」


「ちょっと待って。葵、浮気するなって言ってたよな?」


「何…変な妄想してるの?楽しい事って寝る前に紅茶飲む事だよ?瑛斗の変態」


「ごめん…俺も紅茶飲みたいな。飲めないけどチャレンジしてみたい」


「うん、いいよ。スプーンか何かで飲ませてあげるね」


「なんなら口移しで――」


「永遠に寝よっか?瑛斗」


「すみませんでした。生きさせてください」


「冗談だよ。瑛斗。一緒紅茶飲もうね」


3人は瑛斗の事を散々いじっていた。部屋には笑い声が絶えず響き渡っていた。そして3人は予定通り寝る前に紅茶を飲だ。瑛斗は葵にスプーンで、飲ませてもらった。紅茶は苦手だったがなぜかすんなりの飲むことができた。


3人は久しぶりに同じベッドで眠りについたのだった。

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