第18話 1人で。そして…

アリスが部屋を離れてしばらくして、瑛斗は再び起き上がった。意識していたのか自然と視線は置いてある装備や武器類に視線がいった。そしてベットから降りそこへ向かう。装備を持ち無言のまま身につけた。そして武器を持ち部屋のドアへと歩いて行く。ドアを開け左右を見てアリスがいない事を確認して廊下へ出て歩き出した。


葵とアリスのいる部屋の前を通り過ぎ、階段へと向かう。階段を下っている途中、上がってくる男性とすれ違った。その男性は瑛斗だと気付き話しかけてくる。


「エイト様…どちらへ?」


「ちょっと…用事があって。すぐに戻ります」


「そうですか…その事はアリス様にはお伝えに?」


「いや…伝えてない。伝えなくて大丈夫です。すぐに帰って来ますから」


「そうですか…わかりました。お気をつけて」


その男性がそう言うと階段を上って行った。瑛斗も階段を下り、その建物の出入り口に向かう。ドアを開け外に出ると、馬を貸してもらうために建物の横向かう。


瑛斗自身、生まれてから馬を扱った事が無く最初は上手くできるか不安だったが後ろに乗せてもらった時こっそりと見ていたためなんとなく覚えてしまった。馬に乗り、手綱を持つ。そして瑛斗は馬を走らせた。



瑛斗の向かっている先は、アリスたちの国と対立している別の国。葵を撃った敵兵もその国の兵士だった。その国の場所は大体わかっていた。‘‘あれだけ’’の復讐では瑛斗は満足していなかったのだった。そして瑛斗は馬を走らせ、その国へと向かって行った。



その国へは片道30分ほどの距離のところにあった。瑛斗は必死に馬を走らせ、その国へと着いた。その国から少し離れたところで馬から降り、歩き出す。


しばらく歩き、入り口らしいところに着いた。そこには誰もおらず「どうぞ勝手にお入りください」そう思わせるような状態だった。瑛斗はそこへ向かうと、すんなりと敵国の敷地内へと入る事が出来た。


「見張りとかいないんだな…簡単に侵入出来ちゃったよ…」


敷地内には建物が数個あったがその中の一番大きな建物の入り口へと瑛斗は向かって行った。が、しかしその途中にどこからか声が聞こえた。建物の陰から敵兵が瑛斗を見ているのが瑛斗にはわかった。そして敵兵が話しかける。


「誰だ…。お前は…」


「ちょっと用事がありまして」


瑛斗が歩き出そうとした時、その敵兵が小走りで瑛斗の元へと来た。そして身につけている装備に付いているアリスたちの国の国旗を見て驚く。そして大声で叫んだ。


「敵兵ー!敵兵だ!」


そう、大きく叫び近くにあった建物から多くの兵士が出て来た。瑛斗は、一瞬で周りを囲まれてしまった。瑛斗も剣を抜き、備えた。そしてリーダーらしい人物が瑛斗に話す。


「1人だけか…1分もいらねぇな。全員…やれ」


そう言うと一気に敵兵が瑛斗めがけてやって来た。前と、同じ状態、瑛斗は冷静にかわし何人か地面倒した。瑛斗は他の人たちを鋭い視線で見ていた。そして周りを囲んでいた敵兵士全員が瑛斗に向かってくる。剣を振りそれを防ぐが別の方向からも剣が来る。それもなんとかかわすがまた別の方向から剣が来る。軽いループ状態になっていた。


交戦しているうちに、瑛斗の体はボロボロになり意識も遠退きかけている。それもそのはずだ、人数で負けてしまっているから、勝算なんてないに等しい。


「このまま殺してしまえ、1人で戦いを挑みに来た恐ろしさを思い知らせてやる…」


リーダーらしい人物が倒れている瑛斗にそう言った。その人物は瑛斗の腹部を思い切り踏み瑛斗の口から血が出る。腹部を抑え瑛斗はむせた。そして、だんだんと意識が遠のいていく。


「死んで…たまるか…!」


そう言うが、体が金縛りのように動かない。意識が、もう途切れそうになっていた時突然目の前に人物がいなくなった。死ぬ前の幻覚でも見てしまっているのだろうか、瑛斗はそう思っていた。まぶたが閉じていく途中、誰かに体を触られている感覚があり、そして瑛斗の体が持ち上がるのがわかった。そしてまぶたが完全に閉じる前、瑛斗の視界に人らしいものが目に入った。


その人の顔の表情はわからない。だが赤い髪のようなものが視界に入ったのだった。


そして瑛斗はそれを見た直後、気を失ってしまった。

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