第16話 瑛斗の怒り

3人が歩いていると途中も味方が敵と戦っていた。その間を抜けて、そこを通り抜ける。そして 3人は街の中心へと歩いて行く。




街の中心へと着いた3人。周りを見渡すが誰1人いない。自分達の立っているところから少し行ったところから銃声や声が聞こえるがここだけ不自然に静かだ。3人がその場を歩き出そうとした瞬間、周りの建物から数十人ほどの敵兵が出て来た。3人は完全に周りを囲われてしまった。そして周りにいる敵兵がだんだんと近づく。


「おぉ、可愛いお姉ちゃん2人じゃないか。これは楽しめそうだな…」


「確かに、弱そうだな。この人数に勝てねぇだろうよ」


敵兵の何人かが話している。3人は剣を抜き構える。3人の背中をあわせそれぞれの方向を見ている。だんだんと近づく敵兵に3人は力が入る。


「エイト…無理せずにね。さっきみたいにやれば、殺れるから」


「おう…わかった。葵を頼む…」


瑛斗が1歩出る。目をつむり深呼吸し、目を開ける。そして視線を目の前にいる敵兵の1人に向ける。


「この2人には、手を出さないでほしい。やるなら、俺とやれ。死ぬのは、覚悟できている…」


それを聞き葵が叫ぶ。


「瑛斗!死なないで…お願いだから…」


葵の声を聞き瑛斗は振り向く。葵の方を見ながら微笑み親指を立てる。


「大丈夫!心配すんな!」


葵を見るのをやめ、敵兵をニヤッとしながら見る。抜いていた剣を振り上げながら走る。それを見て敵兵も剣を振った。剣と剣が当たり合い音が響く。そして剣を振り払い、ここへ来る前に戦ったあの敵兵と同じ事を瑛斗はやった。喉から剣を抜き、血が滴る剣を下げる。


「何!?あいつ…なかなかやるな…」


「よし、俺らも行くぞ。全員攻撃開始!」


リーダー的な人がそう声をかけ、周りにいた人たちが、一斉に動き出す。アリスと葵は一緒にそれを防ぎ、瑛斗は2〜3人を相手している。瑛斗も戦闘をしている1人が剣を振り、それをギリギリでかわした。少しだけ切れてしまい、頬から血が流れる。


「あぶねぇな…お前、覚悟出来てるんだろうな…!」


瑛斗が走り出す。そして剣と剣が当たる。ほぼ互角の戦いでなかなか振り払うことはできない。力を振り絞りなんとか振り払う。体勢を崩した敵兵を蹴る。そして顔の前に剣を持って行く。


「死にたく無かったら…ここから離れろ…!」


瑛斗は完全に変わってしまっていた。鋭い視線を送り、その敵兵は剣などを置きその場から走り去った。他の人もアリスがほとんどやっており周りには人はいない様子だった。瑛斗が2人の元へと歩き出した。その時、銃声がその場に響く。そして葵が装備の間から見える腹部を押さえ、倒れる。そして血が流れる。


「葵…?葵!」


「アオイちゃん!大丈夫?」


2人が葵に駆け寄る。葵は泣いていた。葵の手には血が付いていた。


「痛い…痛い…よ…」


そう小さくつぶやいていた。その時3人のいるところが暗くなる。誰かが3人の前に立っていた。それは葵を銃撃した人だった。


「気を抜きすぎだよ〜、3人さん?とりあえず……ここで全員死ね」


カチャッと音が鳴り銃口が瑛斗に向いた。瑛斗は下を向いていた。愛する人を撃たれ悲しみもあったが怒りの方が強かった。ゆっくりと持っていた銃に手を伸ばす。装填しいつでも撃てる状態にした。そして素早く、銃を向ける。


「お前が…死ね!」


トリガーを弾き銃声が鳴り響く。銃弾は前に立っていた人の頭に直撃し、その場に倒れる。そして剣を再び抜き倒れた敵兵の元へと行く。


もう瑛斗は、我を失っていた。


倒れている敵兵の眉間に剣を当てる。そして思い切り上に上げそのまま刺した。何度も何度も刺す。飛んできた血が瑛斗の顔に所々付いた。


「よくも…!葵を!撃ちやがったな…!」


瑛斗が刺していると右腕を誰かに掴まれる。それを振り払おうとする。


「や、やめて!瑛斗!刺すのやめて!」


「エイト!もうやめて!聞いてるの?」


2人の言葉は瑛斗の耳には届いていない。2人を無視し刺し続ける。葵が無理やり瑛斗の腕を持ち刺すのをやめさせようとした。


「瑛斗…!お願いだからやめて…!」


「離せ!俺はこいつが許せねぇんだ…離せ…!」


葵が痛みをこらえながら瑛斗を止める。しかし止まる気配はない。


「そ、そんな瑛斗、私大嫌いだよ…」


瑛斗がそれを聞き刺すのをやめる。ふと我に返った瑛斗は泣きながら止めに入っている葵を見る。そして血が滴っている剣をじっと見た。


「お、俺、なにしてるんだ…?」


「瑛斗のバカ…そんな瑛斗、大嫌い…」


瑛斗の背中で泣いている葵。アリスも2人を見て涙が流れていた。瑛斗は自分で刺していた敵兵をじっと見ていた。





その後、瑛斗達は葵の治療のためにアリスの家に帰ることにした。応急手当てをし、ゆっくりと馬に乗せる。


そして2頭の馬はアリスの家に向かって行った。

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