下弦の月だから

あきの

1.呼吸

「まだ起きとったのか?」


そう言った数秒後、祖父の首は血を撒いてはね上がった。

思いの他簡単だった。


さすが中東のナイフは切れ味がすごいな、それだけ思った。


部屋の仏壇を見ると、祖母の遺影が笑っていた。

オレも笑った。


きっとこれで何かが変わるのかな?まだ変われるのかな?

血まみれを持って父の寝室へと向かった。


相変わらずいびきがうるさいんだ。

電気をつけた。


「・・・誰だ? ○○か?」


「うん、そうだよ」


「おまえ、何・・それ、血か!?」


「父さん、死ぬ前に言いたいことある?」


驚きか、恐怖か、父親は窓から逃げようとした。

オレは後ろから羽交い締めにした。


「逃げるなよ、男だろ?」




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