寿死

枯れ井戸

怪奇!怪転寿死

「これは……私の友人から聞いた話なんですがね」


テーブル席の目の前に座る初老の男性は怪談を語る際にもう聞き飽きたような、そんな前口上から語り始めた。

私はそれを聞きながら、右手に流れるレーンから大トロの握りを取る。


「ええ、それがどうか?」


「寿司にも取る順番ってものがありましてね」


「聞いたことがあります、白身魚が最初だとかそういうものでしょう」


生憎私はそんなものを気にしない。

次に取ったのは真鯛だ。


「いえ、それとはちょっと訳が違いましてね、ある順番で寿司を取ってしまうと回転寿司のレーンから死神が流れてきて、たちまち殺されてしまうとか」


「まさかそんな」


海老が流れてきた、私の好物だ、 いただこう。


「あなたも気をつけてください、もしかしたらもう死神に目をつけられているかもしれない」


「誰が殺されるって言うんですか、寿司ですよ、寿司」


そろそろデザートを取ろう、丁度良く大学いもが流れてきた。

それを手に取る。

初老の男性がニヤリと笑った気がした。


「そうですか、では私はこれで」


「はあ、さようなら」


大学いもを口に運び私は気づく。


……そうか、初めから私は死神に目をつけられていたということか。

背後から、物言わぬ死の気配が流れてきた。

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寿死 枯れ井戸 @kareido

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