第2話
「えっと、世界を救うってどういうこと?そして、あなたは誰なの?」
おっ、佐伯いい質問だ。普段はまともなこと何一つ言わないくせに、よく言った。
僕が内心そんなことを言っていると目の前の少女が「あっ」と言って居住まいを正して言う。
「私はこの国【シュガル王国】の第2王女、ルナ=シュガルと申します」
そう言ってルナはニコリと笑う。
佐伯と白河はルナの美しさに見惚れたように口を小さく開けて惚けていた。
確かにルナは可愛らしくはあるが僕はこの女は好きになれそうになかった。なぜかというなら先程から僕達を見る目が嘲りや嫌悪感を含んでいたからである。しかし、後ろの2人は気がついていないだろう。人のことを観察している僕だからこそ気がつけたようなものだ。それくらいルナの
僕が頭の中で要注意人物の1人としてカウントしているとルナが笑顔のまま言う。
「ご説明は私の父である国王が致しますので、どうぞこちらに」
そう言ってルナは扉に向かって歩いていく。
僕達も仕方がないのでそれについていく。
さて、どんな面倒事が待ち構えているのやら。
僕は周りに聞こえないようにため息を吐くのだった。
☆
僕達は今ルナに案内されて玉座の間らしき場所に立っていた。え?ここまでの道のり?そりゃもうファンタジー全開でしたよ。金属鎧を着た兵士とか、美少女メイドとか、クラスの男子や女子が見たらはしゃぎそうなものばっかりだった。その証拠に僕の横の2人は未だにキャーキャー言っている。
そんな2人の
最初に僕達をここに連れてきたルナ、その横にはルナに似た銀髪の美しい女性。その向かいには少々ふっくらした『ザ・貴族』といった見た目の中年男性、そしてその横にいる派手な鎧を着たむさ苦しい男。そして王様という、両の手で事足りる人数である。
僕が周囲を見渡していると王様が口を開く。
「よくぞ参った、勇者達よ」
えっと、参ったというより強制的に呼ばれたんだけどそれは言わないほうがいいよね。
僕が空気を読んで黙っていると王様は続ける。
「それでは勇者達のステータスを申してみよ」
「ステータス?」
僕達が聞き慣れない単語に首を傾げていると王様は不思議そうに言う。
「なんじゃ、ステータスを知らぬのか?ふむ、それでは【ステータス】と念じてみよ」
「【ステータス】…って、なんだこれ」
僕が【ステータス】と念じると目の前に水色のパネルが現れる。
そこにはこう書かれていた。
◆◆◆◆◆◆
名前:【冬原夏樹】 性別:【男】
職業:【魔剣士】/【双剣士】
Lv.1
【HP】150/150 【MP】80/80
【筋力】75 【耐久】80
【魔力】80 【精神】95
【敏捷】95 【器用】85
【技能】
・剣術Lv.1 ・双剣術Lv.1
・光魔術Lv.1 ・闇魔術Lv.1
・詐称術Lv.8 ・鑑定眼SSS
【称号】
・異世界人 ・勇者 ・裏の顔を持つ者
◆◆◆◆◆◆
さらにその下に【使用可能聖剣】という項目もあるのでタップしてみると、ズラリとアイコンが並ぶが、その殆どが赤いばつ印が付いていてタップしてみても反応しないため仕方なく1つだけ白く発光している【原初の聖剣】というものを選ぶ。
「うわっ、なんだ!」
突如僕の目の前に白色の飾り気のない剣が現れる。
王様がこちらを見て言う。
「それが勇者の武器である【神器】じゃ、お主の神器は剣のようじゃのう」
「他にもあるんですか?」
「そうじゃのう、例えば…ほれ横の娘達の神器を見てみよ」
僕が隣の白河と佐伯を見てみると2人の手には僕の剣と同じように白色の飾り気のない杖と槍が握られていた。
僕は2人の武器を確認すると王様の方を向いて言う。
「ところで王様、僕達はこれからどうしたらいいんですか?なんで僕達が呼ばれたんですか?」
「うむ、まずはレベルを上げて欲しいのじゃ。そしてゆくゆくは、扉の先異界の魔王と呼ばれる存在を討伐してほしい。」
王様の説明を要約すると、この世界では数百年単位で謎の扉が出現し、そこから大量の化け物が溢れ出て、近隣の村や町を滅ぼしてしまう。それをなんとかするために勇者を召喚した。ということらしい。
説明を聞いて僕が面倒だと思っていると佐伯が叫ぶ。
「そんなの嫌です!家に帰してください!」
「魔王を倒すまで返すことはできんのじゃ」
「そんな…!」
佐伯と白河はショックを受けたように口を押さえている。
しかし僕は気がついてしまった。ルナの隣の女性が顔を下に逸らしたことに。
(ああ、なるほど嘘か)
僕はそう瞬時に理解する。帰還できるなんて言うのは嘘で、おそらく魔王を討伐した後は丸め込んでこの国の兵器に出来ればよし、上手くいかなければ暗殺でもされるのだろう。
しかし、現状でそんなこと言っても何にもならない。というか、食事に毒を盛られたり夜中に部屋で殺されたりするのがオチだ。それなら気づいてないフリをしているのが賢いはずだ。
僕はそう考え、ショックを受けたかのような演技をする。
そうしていると、ルナが明るく話しかける。
「安心してください皆さん、明日仲間を募集しますのできっと直ぐに魔王なんて倒せますよ!」
「あ、うん。ルナありがとう…」
そう言ってルナは笑う。僕は内心「下手な演技だ」と思いながらも感謝の言葉を口にする。
そうしていると王様が口を開く。
「無理な願いだと言うのはわかっている、しかし、どうか。この国のため、世界のために力を貸してくれ!」
「…わかりました、僕はやりますよ」
嫌です、そう出かかった言葉を僕は押さえてそう答える。すると、佐伯と白河も「やる」と言ったのであった。
「そうか、それでは勇者達よ。今日はゆっくり休んでくれ、部屋は用意してある」
そう言うと王様と周りにいた人間達は退室していき代わりに3人のメイドさんが現れて僕達をそれぞれの部屋へと案内してくれた。
僕は部屋に入ると直ぐにステータスの【使用可能聖剣】をタップする。すると先程と変わらない画面が表示される。そして僕はさっき気がついた事を確かめるためにその画面を左横にスワイプする。すると__
「やっぱりね」
画面がカラオケのデンモクの表示変更のようにクルリと裏返りさらにアイコンが表示された。
しかしわかってはいたけど使用可能なのは左端の1つだけか…
その聖剣をタップすると目の前に深緑色に黄色いラインがまるで生きているかのように明滅する不気味な剣が現れる。
その剣の名前は【原初の
「ククッ、あはははは!面白いなあ…!」
そこに現れた鑑定結果に僕は笑いが止まらなかった。
「これが使用できるのは僕が【双剣士】だからかな?それとも誰でも使えるけど気がつかなかっただけ?でもまあ、気がついても使わないよねこんな武器」
【原初の
◆◆◆◆◆◆
名称:【原初の
<解放効果>
【筋力】+15 【敏捷】+20
<スキル>
【
◆◆◆◆◆◆
おそらく普通の人間なら気がついたとしても使用しないような
そんなものは僕も望んではいない。
「ああ、これから楽しくなるぞ!」
そう言って僕は1人部屋で笑うのであった。
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