第一章 恋と選挙とグリコパイナップルチョコレート - Love, Election & Glico, Pineapple, Chocolate.
真新しい制服。
真新しい級友。
真新しい校舎。
真新しい季節。
視るもの全てが新鮮に見える――――
私、山田桜里子も晴れて、女子高生の仲間入りです!
この晴れ晴れ愉快な春の日、心浮き立たずに居られましょうか?
「……うへ♪」
いや、られません!
「ふ……ふふふ……ふふふふふふふふふふふ……♪」
鎮まれ鎮まれと自重しても自然と浮かんできちゃうんです、含み笑いが!
自然と全身から溢れ出る悦び、鎮められないハッピネス!
辛い受験に耐え忍び、ゲットしましたJKライフ! 始まります薔薇色の人生!
(桜里子翔びます!)
長く長く続くこの坂を登り始めます、今よファンタジスタガール♪
咲かせて、希望の花を!
「グーリーコ!」
銀の翼をのぞみに乗せて、正門へと続く坂を跳ねるように三歩!
勝利者の路を駆け上がってたら、
「桜里子!」
呼び止められちゃいましたよ、私と同じ真新しいセーラー服の彼女に。パイナップル色してた春休みの髪もバージンブラックに染め直し、見事な新入生スタイルの猫被りマイフレンズに。
「あ、
「浮かれまくりじゃん桜里子?」
「当然ドゥェズ!」
だって私は女子高生! 女子高生様ですから!
「そうよ女子高生! あんたは女子高生よ、桜里子! 山田桜里子!」
「イエス!」
ガッチリと繋いだ掌を中心点にして二人でメリーゴーランド♪
女の子は巡り巡って星の数の恋と出会うの♪
「恋愛付加価値が最高に高まってる『選ばれしクラス』だよ! 人としての!」
「ハァーイ!」
「ソシャゲで言うなら星5よSSRよ、存在自体がレアカードよ!」
「あなたとは違うんです!」
って国民の大多数に向かってドヤれる階級入りです!
「やったね
「思えば苦節xx年、艱難辛苦を耐え忍び、いよいよキミ飛び立つ時!」
ヨヨ……とレトロ昭和の母親よろしく、しなだれかかってくる望都子ちゃん。
「ありがとう
私と
とは言っても、単なる腐れ縁の慣れ合いフレンズじゃない。
「遂に成果試される時よ桜里子!」
思春期の自意識が芽生えた頃から研鑽を共にしてきた「戦友」みたいなもんです。
「おうよ
――――何を磨いてきたのかって?
んなもん決まってるじゃないですか。
女子が女子を辞めるまで、女の子が磨くものと言ったら女子力しかありません!
「「世界を革命する女子力を!」」
一夜明けたら誰でも
ハートのハンドサイン掲げ合い、ここに誓わん!
「女子として
「求めし止まん絶対恋愛黙示録!」
「愛こそ全て!」
「愛こそ正義!」
「我ら愛に生き愛に死す!」
「「それが霞一中 恋愛ラボラトリ、愛の戦士たちなのです!」」
「決まったぁぁぁー!」
ぱぁーん!
黒人ヒップホッパーみたいなテンションでハイタッチ! イエス、モコちゃん!
朝からアゲアゲ、ゴキゲングルーヴ!
ここ、ライブステージの舞台演出なら、プシャァァーって煙出てるタイミングです!
パイロ炎が盛大にブワァッって! ドラゴンの息みたいに!
「望都子!」
なーのーにぃぃぃー。
「あ、ジュンジおはよぉ♪」
ついこないだ、先を越されてしまいましてね。
実は望都子ちゃん、最近ねんがんの彼氏をゲット。
本来なら今日という日は、私たち二人の恋愛出陣式になるはずだったのに……スタートラインに立つことなく望都子ちゃんキャンセルです。前途洋々たる勝ち組女子として。
『ごめーん桜里子、あたし彼氏できちった♪』
『は!? …………どこ中の子!?』
『霞城中央』
ぬ、抜け駆けにも程がある!
合格発表後の短期間で、これから入学する高校の同級生を捕まえるとか!
どんだけアクロバティックなフライングゲットですか?
ジャンケンもしないうちからグリコパイナップルチョコレート! と一足飛びにゴールイン!
「許さないぜ、望都子……」
(うぉ!)
実際にヤってるところ初めて見ました!
(こ、これが壁ドン!)
恋愛ラボでも予行練習したことはありましたけど、あれは女の子同士。似たような背丈では意外と様にならないのに、さすが本物の男の子!
「ジュンジ……」
これ! この圧迫感が女の子の可憐さを引き立てるんですね!
「約束忘れたのか?」
女子同士では結構なガハハキャラの望都子ちゃんですら、恥じらいに頬を染めいています!
「…………お前の初めて、全部俺が貰うって言ったろ」
「ジュンジ……」
「俺とお前が校門を初めて
聴いてるこっちが赤面しそうな台詞を臆面もなく吐けるメンタリティ。これが恋愛若葉マークの怖いもの知らずなんですね……
羞恥心が消え去った二人の世界、まさしくバカップルという単語が相応しい恋愛結界が……
いや。
(ダメよ、桜里子)
祝福したげないと。
女の幸せを妬んでも仕方ない。全く以て建設的じゃありません。
結果は結果として潔く受け止めるのが日本人の美徳です。いつまでもウダウダと拘ってたら性格が歪んでしまいますからね。顔に出ちゃいますからね。醜さが顔に。
恋愛ラボの御同輩なら尚更ですよ。
「じゃ
「一緒に行こうよ? 校舎すぐそこじゃん?」
「お邪魔虫は仁義にもとる」
ラブラブな二人に割り込むなど野暮天のすることです。独り者はクールに去るよ。
グッドラックのサインでサラバイバイ。校舎へ駆けてく陽気な桜里子さん。
「…………」
心の汗拭きながら、遠巻きに
(うわぁ……)
ヤッてる。ヤりやがっています。アーチチーアーチーなスキンシップ!
望都子ちゃんと彼氏が繰り広げる愛のセレブレーション。通学路の同級生たちも怪訝そうな顔でチラ見しています。朝っぱらから公序良俗の限界へ挑戦する、ミスター&ミスハレンチ学園を。
(でも!)
羨ましいんですよね?
あれは人を羨む目ですよ!
人目憚らずにチュッチュハグハグするバカップルが羨ましい!
できることなら自分が成り代わりたい!
そういう目です!
自分に嘘は良くないですよ、ミスターマイセルフ?
「ぐ……」
ええその通り。ご多分に漏れず私も、認めざるをえない――この焦燥。滾る想い。
「
いつか私にも素敵な王子様が。女子は皆、夢見るアドレセンス。サムデイ マイプリンス ウイルカムを信じているんです。幼かった時、白雪姫やシンデレラを読み聞かせられた頃から、決定づけられた運命です! それこそが絶対恋愛黙示録なのです!
そう。我ら『霞一中 恋愛ラボラトリ』が研鑽を積んできたのも、【
菩薩から溢れる後光の如く、溢れ出す女子力を糧に探し出す――――運命の
【霞一中 恋愛ラボ 恋の掟 第一条 女の子は誰だってシンデレラになれる】。
それは誓い。
高校入学を機に、恋愛ラボで会得した手練手管を惜しげもなくリリース!
運命という果実を収穫する今、今こそが収穫期! 脇目も振らずに男を獲りに行きます!
「…………な、はずだったんですが……」
同じ高校に入学した
「口惜しや……」
でも今は独り者らしく分を弁え、しおらしく生きる。ハンカチの端をギリリと噛み締めながら。
人としてのランクが低いですからね、私みたいな独り者は。ほぼ妖怪人間ベムです。
早く人間になりたーい! 素敵なステディと出会って【人間】になりたぁーい!
(いや、成れるはず!)
だって今日から私は女子高生! 天下無敵の恋愛適齢期ですよ!
人生に於いて今以上の売り手市場はありません! なにせ女子高生ですもん!
ハンカチ王女こと山田桜里子にも約束されたモテの黄金期到来です!
熱い! ヤバい! 間違いない季節です!
「山田も見つけますよ!」
燃えるようなラブアフェアーの
胸を張って人様に紹介できるスペシャルボーイフレンドを!
人も羨むような仲がいつも自慢の二人になる!
待ってて
叶えます【
世界を革命する女子力で!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます