第16話 無人島に犬が来た事情

 犬と猫に関する質問を、九十三さんにメールで送った返事は翌日の朝会社に出かける少し前に来ていた。


 『メールだと長くなるから、資料を一週間以内に送るね。他にも疑問が湧いたら、どんどんメールでも電話でも遠慮なくしてよ!メールに書けるのは、猫は去勢済みの性別問わず種類問わず、犬は性別問わず去勢済みのドーベルマンが多いよ』


 ラテンなオーラがメールからも漂う気がするけど気のせい。

 動物が好きだから飼ってるわけではないの?

 犬猫どちらも去勢済みで、性別は関係なく飼っていて、犬がドーベルマンを中心に飼っている事以外は種類は様々という事は分かった。


  本来は休みの休日出勤の質問をしてから一週間経った日に、九十三からの資料は届いていた。

 資料請求した保険の資料位分厚い中身のA4サイズの封筒。

 仕事帰りで疲れているので、ちょっとゲンナリしつつ、思い切って開けてみた。


 島を所有する事が決まった時に、真っ先に考えたのがセキュリティ。

 当初は叔母さん一人から始まった島暮しも、一人しかいない島に変な人が来たら助けてくれる人はいない。


 犬達に穏やかな最期を過ごさせてあげたいと、叔母さんの友人が話していたので、警備員代わりに島に住まないかと叔母さんがもちかけて、仕事一筋で独身だった叔母さんの友人である八重樫久恵さんも独身で身軽な立場だった事から、特に反対する人も無く犬達の為に島に移り住んでいたが、高齢になり札幌の老人介護施設で現在は生活しており、五十嵐茜さんという方が後を引き継いでいるそう。


 引退した警察犬の全体の一割が直轄警察犬で、国の所有物故に譲渡などはされず施設から出ることが禁止されていて、施設内で生涯をとげるが、訓練犬に時間を割かれ、引退犬のケアをする余裕は無い為に一般家庭に譲渡される場合もある。

 残り9割の嘱託犬の方が今回は関係してくる。

 引退した犬の次世代の警察犬を育てながら、引退した犬の面倒を見る事が多く、充分なケアがなされないケースが多い事と犬種の特性や他の場所を探すのも難しい。


 最初は八重樫さんの所有する一頭しかいなかったのが、八重樫さんに島で面倒を見てもらいたいと申し出る嘱託犬の飼い主が増えて、現在は10頭預かっているそう。

 飼い主さんも、高齢になってきて訓練士を引退した後、自分の犬が犬生を終えるまで一緒に暮らす事もあるらしい。


 犬達の食事については、元の飼い主さんが責任を持って寿命に関わらず20歳になる迄の分の費用を前払いして、大きな病気になった時は島に住んでいると治療が間に合わない事もある旨一筆書き、診察費用も元の飼い主さん負担。

 それらの必要経費も予め多めに贈与されるケースもあるらしい。

 慈善事業を出来る程の収入は無いので、生活費に関する取り決めと費用負担は必須。

 叔母さんは島を無料提供+叔母さん以外の犬の責任者が面倒を見るシッター代は無償との事。

 あくまでも体を使ったボランティアであり、現金の持ち出しのボランティアはしない。


 小さい犬種は引き取り手があるので、一般家庭では難しい気性や、体の大きな犬を引き受けている。

 腕のいい訓練士がいれば、大きなトラブルは起きないとの事。


 現在は五十嵐茜さんがリーダーで、他は定期的にボランティアの方が入れ替わりに来て、今は2人の高齢の元訓練士が犬達の面倒を看て居る。


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今日も一時間で書ききりました。

明日は猫事情です。 

 

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