第8話 飲食店で人生初の予約をする

 「今日はごちそうさまでした。本当にお代いらないんですか?」

 「今日は急なキャンセルが入ったから特別な予定を入れるのもなんだし、お客さんというより新しい友人に出会えて嬉しかったからね」


 にかっとご主人が笑う。きらんと効果音が入りそうです。


 「これね、私が作ったゆず茶なんだけど、良かったら持っていってね」


 厨房で片づけをしていた奥さんが奥から出てきて、小さな紙袋を持ってきた。


 「わ~いいんですか?」

 「いいのよ。また今度遊びにいらしてね」


 ふんわりと微笑む奥さんに癒されつつ、この店は年末年始とお盆をを除いて年中無休で、年に1~2回急なキャンセルが入る以外は休みの日はないので、どうしたものかと思案する。

 

 「このお店に予約を入れたいのですが、よろしいですか?」

 「ええ、構わないけど、普通に遊びに来てくれていいのよ?」

 「お客さんとして、ご主人のお料理を頂いてみたいんです」

 「それは構わないけど…」

 「そうだね…学生さんには厳しいかな…」


 私は童顔なので、明日の仕事という話は学生のアルバイトだと思われたのだろう。


 「私高校卒業後居酒屋の正社員をやってます。去年の四月から勤めてるんですよ」


 二人は顔をシンクロして見合わせてから、まあ…という感じにこちらをみて驚いていた。


 「若く見えるのね~羨ましいわ~」


 頬に右手を添えて小首をかしげる姿が様に可愛らしさのある大人のあなたが、私にはうらやましいですよ。


 「それで年齢と受け答えの印象にズレがあったんだね。うん」


 なるほど、なるほどという感じにうんうんと頷くご主人。


 「空きがある所からでいいですが、毎月第一日曜に予約を入れたいんです。その日以外の日曜はまず休み潰れると思っておかないとキャンセル入れる確率高いんです」

 「そっか~しばらくは第一日曜のキャンセルが出るか分からないからな…取りあえず、うちは奥さんも僕も実家の両親が亡くなっていて墓参りしたらする事もなく暇だし、お盆休みうちに来ないかい?お盆は飲食店もお休みの所多いよね?」

 「そうですね…お盆は三日休みがあります。実家との兼ね合いもありますから、確認させてもらってからですが、ぜひ又遊びに来させて下さい」

 「そうね。それがいいわね。うち子供がいないし、親戚のおばさんが月に一度来る位で若い人知り合う機会もないから賑やかになるのは嬉しいわ」


 二人とも嬉しそうで、こちらも嬉しい。

 うちの両親の先祖の墓は札幌にあるし、本家に少し挨拶しに行ってお坊さんのお経を聞いたら少し親戚の人達と話して、仕出し料理を食べたら終わりと、分家の人間は楽でいい。

 それを父と母の両実家でやればいいし、その他はドライな家族なので実家に帰るのは年末年始に一泊して終わりだし、お盆に至っては一緒にどこかに行く事も実家に泊まる事も無く解散するから暇。

 普通の親ってこんな感じなのかもね。


 「それでは、お邪魔しました。ごちそうさまでした」

 「自宅に着いたらメールしてね。無事に着いたの確認したいから」

 「本当に送らなくていいのかい?」

 「はい。大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

 

 お二人と携帯のアドレスの交換をした。

 心配する二人をよそに、車での送迎を辞退して一人帰路につく。

 

 




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20年ぶりの執筆は、紙とペンからPCに変化して勝手が違いますね(滝汗

今回の話で回想回は終了で、同じ位か短い話数で、無人島移動準備編に入ります。

犬と猫は無人島に移動したらおります。

この話はアナザーストーリーのようなものなので、本当のまっさらな無人島からスタートする他のヒロインの話は、気が向いたら書くと思います。

 


 

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