第6話 洋風の前菜試食
「これから洋風の前菜をお出しするんですけど、実は今日試作してるのが全部前菜なのよ。だから前菜を出した後は、我が家の普通の夜ご飯で申し訳ないですけど、食べていってくれます?」
厨房から一度こちらに戻ってきて、奥さんは告げる。
「問題ありませんよ。もうこの和風の前菜だけでも美味しく頂いてますよ」
「ありがとう。もうちょっとで運んでくるから待っててね」
ふんわりと微笑んで厨房に奥さんが戻った。
お茶漬けでもカレーでも、手作りというだけで、賄いとレトルトで過ごしている身としてはありがたい。
ほうじ茶は焦げたニオイばかりして酸っぱい安物じゃないし、日本酒も後味が水の味がする吟醸か大吟醸の純米酒だし、これ料金払うって言ったけど、一人一万超える高級店ではないかと考えを巡らせる。
「お待たせしました。どうぞ召し上がって下さいな。すぐに夕飯も運びますね」
告げると早々に厨房に下がって行った。
正直どれも美味しそうだが、どんな味がするのかとか、なんて料理なのかとかは、レトルトと賄いで生活し、実家から出るまで共働きな両親にありがちな食事をしていて、休日も良くてファミレス、ほとんどファーストフード店に連れていかれていたので味の想像がつかない。
彩りから、盛り付けから、切り方から、味からカルチャーショックの連続。
イタリアンなのか、フレンチなのか、中華なのか、それとも別な国の料理かも分からない。
白ワインと赤ワインがついてきたが、なんとなく無難な白ワインで生の魚介類を食べて、これだけは駄目だと感じた以外は食べ合わせなんて全く分からない。
美味しい。それだけは事実として認識するのが精いっぱいだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます