私と彼氏の嘘の恋

@soyokazanai

第1話 12/22のデート①

「梅子!」

聞こえた祐一の声に、その元を辿った。祐一は私が出てきた出口とは真反対の方向からきたようだ。息を切らせながら駆け寄ってくるその姿を、少しの高揚感と冷めた気持ちの両方を感じながら笑顔で迎え入れた。

「おそいよー、もう」

「ごめんごめん、まじで」

両膝に手を置き、背中を丸めて肩で息をする祐一を見下ろして、もう一度「もう」とため息を吐いた。

「大丈夫?そんな走ってこなくても良かったのに。」

「や、うん、ほんとごめんな」

「いいよ、そんな大袈裟」

祐一のぜえぜえと苦しげな呼吸が穏やかになるまで待って、私たちは歩き出した。

クリスマスを3日後に控えて、街はどこか浮き足立っているように見える。駅前の柵、街路樹、駅ビル、どこを見回してもイルミネーションのライトが巻き付けられていて、なんだか可笑しかった。人通りの多い交差点は信号を待つ人が溢れかえっていて、誰もが無意識に他人と一定の距離を開けて立っている。とりとめのない思考の端で、そうふと思った瞬間隣に立つやけに距離の近い男に嫌悪感を感じた。手に絡められた祐一の指が、どこか生暖かい体温、湿り気、かすかに動く指先、たまに握る力加減を変えるところ。…気持ちわるい。

ピッピピッとなり始めるアップテンポな音と、動き出した周囲の人に、信号が青に変わったのだと気付いた。祐一に半歩ほど遅れて、私も足を前に踏み出す。余計なことばかり考えてしまう自分の頭が忌々しい。歩き出し、意識を少し逸らしてしまえば、さっき感じた強い嫌悪感なんてすぐに薄れる。少しだけ小走りに、彼と開いてしまった半歩の差を埋めた。

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