Fun! Fun! Fun!
@ecochan
第1話 前を向け、わたし。
とうとう2月になって、雑誌の中には春の花が咲き始めた。春の風はまだ吹いてくれない。寒過ぎる京都の街を、空気の抜けたパンク寸前の自転車で全速力で駆け抜ける。朝シャンで半分濡れた髪を冷たい風で乾かしながら、風呂上がりにゆるっとした服を着てニキビとシミだらけのすっぴんで職場へ向かう。別に美容に興味がない訳じゃないし、自分が嫌いな訳じゃないし、恋愛に興味がないどころか毎日占いでいつ彼氏ができるか調べているくらいだ。25歳になったばかりで、彼氏がいなくて、60kg手前でギリギリもがいてて、仕事には遅刻してばっかりで、自分が大好きなのに自分に自信がなくて、自分を傷つけることばかりしてる自分に別れを告げたいと思う毎日を過ごしている。
「先生の彼氏は何してる人なの?」
「え?彼氏なんていませんよ?」
「またまたぁ~」
「ほんとですって。」
こういう会話で思うのは、彼氏がいるように見えることが嬉しいってことと、彼氏がほしいってこと。冬に彼氏と別れたのは別に痛手じゃなかったのに、そのあと全てがどうでもよくなってしまって結果的に自暴自棄になってたことが今は悔しい。自分の承認欲求をたいして好きでもない彼氏という存在で満たして踏ん張っていたってことが、悔しい。そんなわたしが春に変わったきっかけは、今思えば本当にしょうもないこと。食後にこたつの中で海外ドラマを見ていて、ただただこんな風にセクシーな恋愛がしたい。デートに誘いたい、彼に誘われたい、そんなヒロインみたいな生き方がしたいって思った、ただそれだけのことだった。前を向け、わたし。
わたしが自分に課した春の試練10はこれだ。
1:毎日男と連絡を取れ
2:毎日完璧なおしゃれをしろ
3:毎日ジムに行け
4:毎日男の肌に触れろ
5:毎日部屋をきれいにしろ
6:毎日一つは仕事の勉強しろ
7:毎日英語の勉強をしろ
8:毎日自分にプレゼントをしろ
9:毎日他人にプレゼントをしろ
10:今一番好きな人にできるだけ会いに行け
単純なことなのに、できなかった過去のわたしのことが悔しい。でもまだまだ、これからわたしは変わっていく。夏のわたしはひと味ちがう。
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