夫婦喧嘩と回転寿司

@tetra1211

第1話夫婦喧嘩と回転寿司

「アホ、ボケ、カスーーー!!お前なんか大嫌いじゃ!!」


思いつく限りの暴言を夫に浴びせ、妻は家を飛び出した。


「あー、ムシャクシャする!!怒鳴ったらお腹減ったし。こうなったら豪華なランチでも食べてやるもんね!!」


鼻息荒く妻が向かった先は、どこにでもある回転寿司だった。

どうやら、ごく普通の主婦の懐事情では贅沢をすると言っても回転寿司が限界のようである。


「さてさて何を食べようかしら~。まずはさっぱり〆サバかな。」

最初に〆サバを選ぶとはなかなか渋い主婦である。貧乏性が板についている感も否めない。


次に手に取った皿はいくらであった。


「いくら、買うと高いんだよね~。うーん、おいしい!!いくらと言えば新婚旅行で行った北海道を思い出すなぁ・・・。いやいやいや!せっかくのお寿司が不味くなる!」


気を取り直したように、次に妻が手に取ったのは鯛だった。


「鯛もおいしいなぁ。そういえば妊娠が分かったとき、旦那が鯛のお刺身買ってきたっけ。少し照れながら、めでたいねって言って。結局流産しちゃったけど、私が立ち直るまでずっとずっと支えてくれたっけ。」


妻の目に光るものがあった。それはワサビによるものか、それとも・・・。


ぐるぐるまわるお寿司を眺めながら、妻は何かを考えているようだ。

不意に立ち上がり伝票を手にレジへと向かった。


「お会計は540円になります。」


「じゃあ、1040円で・・・。あの、すいません。お寿司の持ち帰りってできますか?」



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