やる気なし護衛執事の雇い方(仮)

エリートニート

【Magazin-Ⅰ】

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 俺が|小学4年生(ガキ)だった頃の話だ。

 土曜日にデパートの屋上で戦隊物のヒーローショーが開催されることをクラスメイトに教えてもらった俺は、その日の夜、両親に頼み込んで連れて行ってもらう約束を交わした。

 そうして連れて行ってもらったヒーローショーを見た俺は、いつもTVでしか見ることのできなかったヒーローを生で見れたことにとても感激していたそうだ・・・・・・・




 ……運が悪いのは昔からなんだろうな。


 ヒーローショーがクライマックスを迎えたその直後、数発の渇いた銃声が青空の下に鳴り響いた。


 一瞬にして静まり返る会場。


 誰も何も言わず、動けずにいる状況下で、ただ一人屋上の入り口からふらふらとした足取りで出てきたその男が発泡したのだとを、大人たちは即座に気付いた。


 「あー、あー、っとに、うっせぇんだよマジで! 殺すぞマジで! お? おぉ?!」


 男は銃を片手に振り回し、狙いを適当に着けながらバンッ! バンッ!と大声を出しながらゲラゲラ笑っていた。自分の行動にビビる人間の反応を楽しんでいたんだろう。

 そんな調子でステージに近付いてきた男は予め予定していた行動だったのか、ステージの真下―――ステージを一番近くで見られる観客席にいた一人の子供の腕を掴んで引き寄せた。


 ……そうだよ。その子供ガキってのは俺のことだよ。笑いたきゃ笑え。


 とまぁ、そんな訳であっさりと人質となっちまった俺。何が何だかよく分からなかったんだけど、それでも心のどこかで絶対に助かるって思ってたんだ。

 だってそうだろ? ほんの何mか先には毎週TVで観ているヒーローがいるんだぜ? きっと隙を付いて俺を助け出して、この男悪人を成敗してくれるって信じて疑わなかった。そんな訳ないのにな。


 人質にされた俺の目の前で、ヒーローは腰を抜かして後ずさり始めた。男が銃口を向けるとヒーローはペコペコと何度も頭を下げ、必死に命乞いをし始めた。

 そんな姿を見せ付けられたら、流石に馬鹿だったガキの俺でも分かったよ。“ヒーローなんかいるわけ無い”、ってな。


 結局その後、警察がやって来た十分後に男はお縄について事件は解決となった。

 銃口を向けられた時に何人かの警官が気付いたそうなのだが、男の持つ銃の銃口に穴が無かった―――金属製のモデルガンは、全て製造された時に穴を塞がれる―――ことから、男の持つ銃が発火式のモデルガンだと断定、俺に被害が及ばぬよう、タイミングにだけ気を付けて確保するといった対応策で事なきを得た。


 この事件以降、俺がヒーローショーに参加するのは勿論、TVでヒーロー物の番組を観ることは無くなった。人質にされたこと以上に、ヒーローなんていないということがショックだったんだろうな。

 俺ももう、今年から高校生だ。神様もサンタも幽霊も可愛い彼女も全部フィクションの中だけの存在だってことを知っている。

 勿論、ヒーローだって存在しない・・・・・・・









 「―――ってこれだけ言ってるのに、ちっとも聞く耳持たないのな」


 「こればかりは認める訳にはいきません。

 だから何度だって言いますっ。カナタさんは私のヒーローです・・・・・・・・



 むー、と頬を膨らませる護衛対象お嬢様をいなしつつ、俺は数日前の出来事に思いを馳せるのであった。









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