第115話 里帰り(その20)
「……何、隠してる?」
ご主人様は春慶を睨むが、春慶は惚けてみせる。
「いーんだよ、細けぇことは」
「いーや、気になる。…親父もそうだ、なんでアレを雇ったのか前々から不思議に思っていたんだ。いったい何を隠しているんだ?」
すると春慶はしばらく唸り、
「……どうしても知りたいか?」
「ああ」
春慶はため息を吐いた。
「わかったよ」
「いったいA子は何者なんだ?」
「もう一度言う。アレは間違いなく人間だ。但し、ちょっとばかし変な呪いみたいなのが掛かってる」
ご主人様は呪いという言葉に思わず顰めた。
「……まさか発育不良の」
「んー、それは結果みたいなもんだ。なんつーか、魂がちょっと足りてない」
「魂が足りていない?」
ご主人様は戸惑った。
「正確に言えば削られているって事だな。ただ、どういう事情でそうなったのかは俺も親父殿から聞かされていない」
「親父が?」
「アレは親父殿の知り合いの娘なのは知ってるよな」
「それとなく……」
「多分親父殿も詳細は聞いていないだろうよ」
「聞かないで預かったって言うのか?」
「聞かなくても解るところがあったんだろ。俺たちの親父殿だぞ」
「あー」
ご主人様は何となく納得した。
「でも何で俺の所に」
「聞いてないのか」
「ああ」
「ありゃあ、お前の嫁にする気だ」
「ブーッ!!」
思わず吹き出すご主人様。勢い余って湯がしぶいた。
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