「ご主人様、ご実家から荷物が届きましたが…」

「おっ、兄貴の奴、今年も気を利かせて送ってくれたな」

「何ですのソレ」

「今夜が解禁のモノだ」

「え」

「あれ？今夜０時解禁と言ったら、ほら」

「でも、それ」

　そう言ってＡ子は伝票の内容品の項を指す。

「“マーボー”」

「……兄貴相変わらず悪筆というか」

「ああ、ボジョレ・ヌーボーですか」

「日本は解禁最速だからな。いつもこの日はこれで０時きっかりに封を切って…」

　包装を解いて中身を見た瞬間、ご主人様が固まった。

「えーと」

「最近のボジョレ・ヌーボーって豆板醤や挽き肉、豆腐で作られているんですかね」

　中身はどう見ても麻婆豆腐の材料だった。

「おんどりゃああああああっっっっ！！」

　ご主人様は絶叫して携帯を掛けるが、相手にどうしても繋がらない。

「くそうっ、ワザと着信拒否してやがる！　どんだけぇぇ！」

「愉快なお兄様ですね」

「不愉快すぎるわ！」

「なーんて」

　そう言ってＡ子はもう一つ小包を取り出した。

「ちゃんともう一つ来てますよ」

「……これもマーボーになってる」

「あら」

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