妖怪たちへの新春挨拶

 妻と息子が家を去って一年がたった。

 選挙で惨敗した結果である。

 定年を迎えて二年がたった頃である。

 定職にも就かず派遣業者に登録し、退職金で食いつないでいる日々だった。

 無残な人生になった理由を考え続けていた。

 生き恥をさらし続けて国家機関の文書の中にも記録された前代未聞の悲惨な負け犬人生を息子に語らねばならない時期がくる。まだ中学生で妻である息子の母親と結婚するまでの自分が妖怪人間ベムのようだったと簡単に説明しているが、それではすまなくなる日が来るだろう。

 このあせりと過去の記憶が怨霊のように心にすくい、些細な切欠で爆発し、妻や息子に八つ当たりしたのである。

 これが家庭崩壊の一因になった。

 夫が完全に壊れてしまったと妻は嘆いたが、そのとおりだった。


 すべて思春期に決まっていた。

 横須賀の大学校に入校する時には人格や思想は完成していた。

 それを変える気はなかった。

 エネルギーなど資源問題、食糧問題、すべて人口問題に原因があると確信した。

 この地球上で生存できる人間の数には限界があると言うことである。ひどい閉塞感を伴うものであった。

 また個々の人間や国家が生存をするために奪い合う戦争が起きると言う予感である。

 誰でも抱く不安でかも知れないが、深刻さには個人差がある。

 私が感じた閉塞感の深刻さは比べようがない。自分の人生を支配し続けた。そのようになった理由は周囲を海で囲まれた、閉ざされた島で生まれたことに一因があったと思う。

 ところが息子が成長するにつれ、この破滅に対する恐怖が和らいできたのである。

 悩みの深刻さは増すはずだったが、不思議なことであった。

 もちろん息子に不幸を申し送る訳ではない。

 三月十一日から三月十二日の原発事故に対する怒りや後悔も同じである。

 責任はないが悔やだ。津波被災や水素爆発以前の地震振動で福島原発は壊滅的な被害を受けていたと言う説に触れ、本質的に大変なことであるが、かえって安堵したものである

 理屈では説明できない感覚である。自分には救いである。すべて息子の成長とともに身に付けた感覚である。

 ゆとりを得たと言ってよい。

 この感覚を戸惑いながらも甘受した。

 それでも息子に自分の人生を、どのように説明すべきか悩み続けた。

 ところが最近になって明るい兆しを感じている。

 妖怪のお陰である。

 息子に自分の人生を伝える言葉も思い付いたのである。

「世間には人の心に毒を盛る者や人を抹殺しようとする者がいる。ゾンビや幽霊、妖怪、鬼などは彼らに比べれば可愛いものである。恐ろしいのは生きている人間であり、日常生活に潜む罠である。大人になり、父である私の人生を知りたくなった時には、母さんに聞け」と言おうと思う。


 とにかく妖怪、幽霊、ゾンビ諸君、初春、おめでとう。

今年もよろしく。




 追記

 「柵の中にて」という短編を書いたことがある。

 あの頃の小さな集団の混乱が、今回の事故に自衛隊が対応できなかった素地を造ったかも知れない。

防衛省自衛隊が原子力災害に取り組むか否かの分岐点は30年の九電鹿児島川内原発稼働に合わせて、第8施設大隊という部隊が川内移駐を行った時だと思います。

自分は備えるべきだと公言してしまいました。

当時の大隊長は上級司令部まで問い合わせて下さったようです。

記憶に誤りがなければ今も避難生活を強いられている福島県浪江出身の方だったのではないかと思います。

近くには川内という集落もあるようです。

それなら運命の悪戯、皮肉と言うべきです。

化学兵器対処動作は自衛官にとって基本動作であり、放射能に対する被害も、この動作で対応できると認識を持っていたはずです。


その頃のことを書いた小説です。

30年前から歯車が狂い放しだった。

あえて言えば、生まれた時から狂い放しの一生だったかも知れない。

また自衛隊の歯車が狂ったのもその頃からかも知れない。

自分の人生と無関係ではなかったかも知れません。

民主党政権奪取は厄払いの意味があると感じました。何かが起きるはずだと思いながら数年を過ごしました。

宮崎県の口蹄疫病や霧島山噴火の際には、うまく立ち回ったつもりですが、原発事故まで控えていようとは、かえすがえす残念無念です。

仕事の関係とはいえ、原発の異常を知ったのは2011.3.12に日付が変わって1時か2時でした。

すでに自衛隊は出動をしているはずだと期待をしていました。


定年後、小郡市議選に立候補。これも狂った歯車を正常化するための選択でした。しかし惨敗。妻や子は妻の実家に返して別居生活です。


今回の福島原発事故で、どれだけの多くの者が、どれだけ運命の歯車を狂わされたのか時を待たねばならないようです。




国賊という言葉は防衛大臣が口にする前は死語に近い言葉であったはずである。

それに続く言葉は天誅と言う言葉であり、民主主義や歴史の教訓を否定する言葉であることに間違いない。


国民にとって、決して喜ばしい現象ではないと感じます。

根を絶つためには、本物の国賊を探し出すことです。

日本の焦りは東日本大震災と福島第一原発事故から始まっています。

津波被害は突貫工事で急ぐこともできます。しかも多くが認める自然災害で人災ではありません。

しかし福島原発事故は自然災害ではなく、人災です。放射能汚染物質の除染もままならず、自然減衰や拡散を待つしかないのが現状でしょう。

被害は想定を超えるはずです。

このような事故を起こした存在こそ国賊です・。

徹底的な国賊解明が必要ではないでしょうか。

天誅ではなく法廷で処罰を下すべきだと感じます。

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