第17話創世主の地球儀
人形館で出会った最も不思議な物に創世主の人形と言うものがある。
創世主の人形と言う物を館長から紹介された時には単なる地球儀にしか見えなかった。人形館の奥まった、まるで秘密の場所に大事に保管されているのか理由も分かるはずはなかった、館長はガラスケースの鍵を開錠し静かにガラス戸を開け、惜しいだくように地球儀を取り出し、ショウウインドウガラスの上に置いた。
この世に存在するのが奇跡と言える物ですと紹介した。
緊張したせいであろう彼の額には汗が浮いていた。
汗を手の甲で拭くと、ちょっと失礼と私のひとさし指の指先を握ると静かに太平洋に青い近付けた。高齢でしかも男性とは言え、突然、指先を握られて狼狽した。館長は私の狼狽など意に介さない様子で、静かに静かに津波を起こさないようにと理解できないことをつぶやきながら、私の指先をハワイ諸島の上に置いた。たしかに指先は水に触れる感触がした。青い地点に指先がちょっと触れた瞬間に、その指先を中心に円い波紋がスーと広がったのである。
館長はおっといけないと叫び、これは大津波が襲ってくるぞと言った。
しかしすぐに何にもなかったように、太平洋側だけで災いを起こすのは不公平だと言い、地球儀を百八十度静かに回転させ、ヨーロッパを目の正面に向けた。
今、世界で一番、騒がしいエジプトが良いだろうと言いながら、彼は私に静かに指を触れるように勧めた。
私は恐る恐る、カイロ周辺を人差し指で触れた。これまで味わったことのない奇妙な感触が指先の細胞を刺激した。地球儀から悲鳴が上がった。次の瞬間痛いと言って指先を地球儀から離した。
館長は私の狼狽に笑いながら大きな虫眼鏡を渡して言った。
「今、触った部分をのぞいて見て下さい」
彼の言葉に従い虫眼鏡をのぞくと、大勢の人々が空を見上げながら逃げ惑っている。地獄絵、阿鼻恐慌と言う表現がふさわしい。将棋倒しになり、踏みつぶされる人間、押しつぶされた人間、戦車が空に向かい盛んに射撃をしている。機関銃も乱射している。驚いたことに戦車の射撃を見た館長は、戦車砲があなたの指先に当たったのだろうと解説をしたが、指先を眺めても何の変化も残っていない。の押しつぶされた人間は貴方の指先に押しつぶされたと彼は説明した。
私は自分がしでかしたことを知り動揺し、「なぜ、こんなことをさせた」と館長を問い詰めた。
館長は気に介さず、言った。
「創世主が行うことに理由などない。ただ結果としてこれで騒動は収まり、秩序も回復し世界に騒動が波及することはないでしょう。地球上でしか生きることのできない人間は、この現実を人間は受け入れるしかない。そしてこの地球儀は宇宙から見た地球を示すものです」
地球上の騒動など無意味だと館長は説明したのである。そしてさらに詳しい創世主の地球儀について詳しい説明をした。
地球で起きていることをすべて映し出します。六十億人に及ぶ人間の行為も動物や植物の様子も一億分の一、数千万の一の大きさにして具現しているのです。夢を中か催眠術に操られているのだと思いながら、虫眼鏡の中の人形のような人々を眺めていた。
精巧な仕組みの謎を解こうとした。人形使いが操る糸を捜そうとしたのである。
館長は私の疑念を見透かして言った。
すべて本物ですよ。人形使いなど存在しません。テレビニュースが真実を伝えるはずです。
太平洋で原因不明の大津波。
エジプト、カイロで謎の皆既日食。直後、原因不明の死傷者多数。
テレビが緊急ニュースをテロップで流している。まだ悪夢のような夢から覚めることはできない
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