花咲くよりはやく、蕾よりあとに。
北塚
序
序
わたしは友情からはじまる恋ってものを信じていない。
『知ること』をものさしにして考えるなら、恋は知り尽くすことを求めるけれど、友情は一部を知って満足する。
秘密に一歩踏み込むだけで友情は砕けてしまう。その先に恋をつくることなんてできない。ただ、粉みじんになった友情が残るだけだ。素足でその跡を歩けば、鋭くとがった友情のかけらで怪我をする。
恋をするなら、最初から相手を知り尽くそうとしなきゃいけない。それは相手をいつくしむキレイな気持ちじゃない。相手のことをなにもかも知り尽くして、飲み込んで、自分の血肉にしてしまおうとする悪意なのだ。
――だからわたしは、ありったけの憎悪を込めてゴムべらを振り下ろした。
熱で崩れかけていたハート型のチョコレートは、一撃で形を失ってしまった。ちくりと心が痛むけれど、これが恋の痛みなのだ。真剣な恋には、心を崩すような痛みが必要不可欠。
そう自分に言い聞かせて、わたしは再びゴムべらを振るう。
彼女を知り尽くし、壊し尽くし、わたしだけのものにするために。
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