親ガチャハズレの人生

ファンタジスタ入れ歯

序章。

この日、月曜日の祝日のため、現場はあったが、人数いらないみたいだったので

チーコさんに現場いってもらい、俺は休みを貰っていた。


昨日に引き続き、朝8時からハヅキに起こされて、嫁に離乳食作ってもらい、あげていた。

嫁はせっせと洗濯などしてくれていて、俺はハヅキとじゃれていた。

合間合間に今日はどこいこうか?などと他愛もない話をしていて、いつもの日々だった。


そんな昼過ぎ、俺のスマホがなる。

ハヅキを抱えながら机に置かれているスマホ画面を覗き混むと、ばぁちゃんからの着信だった。

このところ、1日に4コールぐらいで切れる着信があったが、ほっていての今日だった。


着信はなりやむことなく、嫁にとったほうがいいかな?と聞くと、とりあえず出てみたら?と言われ、嫌な予感しながらも出てみる。


「もしも…」と言い切る前に食いぎみで

「たすけて!たけちゃん!!」とテンパる声。

嫌な予感していた俺は冷静に

「どないしたん?」

「いいから!お母さんとこきて!」

なんとなく理由は分かってはいるんだが。一応。

「理由いうてくれんと。」

「そんなんいいから!」

の声を最後にばぁちゃんの声は聞こえなくなり、


ドン!ガシャン!!ガチャン!ドン!!

「うるさいんじゃ!ゴラァ!おまえら!」とどうのこうのと暴れてる声と耳障りな音が聞こえる。


はぁ。やっぱりか。

そう思い電話をきり、兄貴に電話。


「もしもし。なんか電話あった?」

「おう。もう向かってる。」

「そうか。俺もいかんとあかんな?」

「せやな。」


電話を切り、嫁は家の事情をだいたい把握してくれてるのでざっと説明して、笑顔のハヅキにバイバイして、昔に使ってた通勤着で原チャリフルスロットルで実家へ向かった。


団地周辺につくと、兄貴が歩いて向かってるのを発見。

エンジンを切り横でおりると

「お?原チャリできたんか(笑)」

「ええタイミングやったな。」

「ほんま勘弁してほしいな。」

「それな。」

とグチグチいいながら足早に向かった。


団地の3階にあがると、カッチャンがいてて、手のひらを横にひろげてお手上げアピール。

遠目でわかるぐらい服はびちゃびちゃになってるようにみえた。


カッチャンは反対方向の階段から降りていって、俺らは玄関へむかう。

罵詈雑言と騒音が聞こえる。


やれやれ。そう思いながら二人で入っていく。

玄関にまで物がひっくり返っていて、靴を脱げる状況ではないのがわかり、土足で上がっていく。

床に敷いてあるカーペットはびちゃびちゃで、足の踏み場もないぐらい割れた皿やひっくり返したテーブル、テレビなどがあり

土足が正解だなと思いながら怒号の聞こえるリビングへ。


おかんが全裸でサッチャン羽交い締めで座らされていた。

おかんの右手にはカーテンレールの端くれが握りしめられていて、後ろから抱き締められるように縛っているサッチャンの頭を叩いていた。


兄貴はその光景を見や否や即座に前に回り込み

「なにしてんじゃ!!ゴラァ!」ドゴッ!とグーパン。

倒れるおかんの肩を両手で掴み、頭を激しく揺らし

「どんなけみんなに迷惑かけたらわかるんじゃ!お前は!!!」と顔を真っ赤にし、悔し涙を堪えるかのような声で叫ぶ。

「じゃかましぃんじゃ!!!オラァ!!」とメゲテナイおかんがレールを振りかぶる。

兄貴は左手で受け止め、レールを投げ飛ばし座り込んでるおかんに蹴りこむ。

おかんも座りながら両足で蹴りまくる。

蹴りながらそこらに転がってるものを武器にしようと手をまさぐるが

兄貴は手に届きそうになるテーブルなどを全て蹴り飛ばす。


なんのこっちゃ状態で

「暴力だけはやめとけ!っておい!」と割って入ると肘など顔面に入ってきて痛い痛い!となりながらも静止する。


兄貴が「一生入っとれワレ!出てくんな!」

と精神病院にいけと怒鳴る。

「ほんなら電話せぇ!いつでもいつまでも入ったるわ!さっさと呼べや!」とおかんがまくし立てる。


「電話するわ俺。」と俺はスマホでいつもの久米田病院を検索し電話する。

「すいません。母親あばれまくってて、手がつけられんので入れてください。今すぐ。」

と電話してる後ろで殴り合いの罵倒しあいが始まる。

すると病院側が「あーあばれてますねコレは。」と理解してくれたのだが、今日は休みのため一度確認すると電話が切られてしまう。

かけ直しがこないまままっていると

「まだこんのか!さっさとよんでこいや!本部か?おぉ!!?誰でもかかってこい!全員殺したんぞ!おい!!」と手当たり次第物を投げおかんはずっと怒鳴っている。

「じゃかましいんじゃ!来るからおとしくまっとれ!」と俺が言うも聞く耳はもたない。

「おどれら家族がなんだがどうでもええ!出てきたら覚えとけよ!ワシが正しいんじゃ!正義は勝つんじゃ!」と意味不明なことをぶつぶつと言うてるのを無視し

兄貴に催促され、病院に再度電話。


すると

「救急隊員怪我してしまうので、警察を呼んでください。受け取りの手続きはしときますので。」

と言われ、兄貴に電話をかわってもらってよんでもらう。


数分後、警察が7名ぐらい現れてゾロゾロとリビングへ。

おかんは勢いが着いたようで、サラダ油を撒き散らし、全身にかぶりライター片手に警察をあおる。

警察の一人はぶちギレ、おかんの両手をおさえ啖呵をきる。

おかんは流石にビビったのが大人しくなる。


車イスを用意してほしいと警察に言われ、玄関にある車イスを広げて準備。

おかんはパトカーへ運ばれていく。


兄貴の車で岸和田警察に向かい、兄貴が聴取うけてるあいだに、ヤーチャンらと合流し、終わるのを待っていた。


兄貴がおりてきて、久米田病院に向かい、またもや兄貴が入院の書類などをやってくれてるあいだに

待合所で、ヤーチャンらに事の経緯を聞くことにした。


暴れた今日という日は、ばぁちゃんの誕生日だった。

約一週間前に、ヤーチャンやサッチャンにおかんから電話があり

ばぁちゃんの誕生日に、近所にあるファミレスを昼の一時に予約してあるから

プリンでも買ってきてサプライズ誕生日しよう。と話されたそうだ。


そして当日。

自営のヤーチャンは店を休みにし、祝日のためサッチャンもカッチャンを連れてファミレスへやってきた。


しかし。


予約などされていなかった。

定員になんど確認をとっても予約はなかった。


不振に思い、なぜか電話が繋がらなくなっている近所にあるおかんの家へ向かう。


インターホンを鳴らしても反応がないため、ドアノブををひねると鍵はかかってなかった

チェーンが掛かっていてガンッ!となる。

わずかな隙間からおかんを呼ぶと

「たすけてー!はよはいってきてー!!」と叫ばれる。


「どないしたんや!?チェーンかかっててはいられへんで!」とヤーチャンが隙間から叫ぶ。

「誰や!チェーンかけたん!早くたすけてー!」

「あんたやろ!あんたしかかけれんがな!」

とやり取りしながら

カッチャンの火事場のクソ力を発揮し、ドアを全力でひっばる。

チェーンは粉砕され、家の中があらわになる。

すでに荒れ果てていたが、気にする間もないため急いで声のする風呂場へ向かった。


おかんは全裸で湯が全然ない浴槽にハマりこんでいた。

太っているため、キレイに収まり混んでいたようで、カッチャンが慌てて引き上げる。


そしておかんは「お前ら誰も助けにこんやんけ!!!電話しても誰もでんし!!」

とうわぁぁぁ!と暴れまくり蹴散らしまくったそうだ。


そしてこの有り様だそうで。

俺ら誰一人に電話はかかってきた痕跡はない。

幻覚または妄想だろう。


一時間以上はまっただろうか。

兄貴が出て来て、興奮おさまらんおかんはベットに縛り付けられているようだが、とりあえず戻ることになった。


帰り道にたこ焼き屋が空腹の俺らの目につき、路肩に止めて一番量多いのでオススメの2つ頂戴。と買って荒れ果てた実家へ戻った。



実家へつくと待たせていた、ばぁちゃんがお隣さんと話していた。

飼っている犬が気がかりで帰りたいと言い、お隣のおっちゃんに送っていってもらおうとしていたようだ。


兄貴が僕が送るからと断りを入れてる間に、俺は原付で近くのホームセンターへ。


ゴムせいの頑丈な軍手とゴミ袋を買いにいくためだ。


買い物中、「なんで片付けせなならんのか。ほっとけよ。全部自分が悪いやろ。俺、息子やからってなんも関係ないやろ。」と

頭の中でぐるぐる回っていた。


早く帰りたい。嫁と子供が待ってる。

つよく思ったが、それは叶いそうもなかった。



さっと荒れた家へ戻ってきて、片付けを始めた。


全フロアに敷かれたカーペットもカッター1本力業で裁断し、汗だくになりながらも割れたさらや壊れたテーブル、ひっくり返ったコンロ…………全部……全部、片付けていた。



くそったれが。



――――――――――。


いろいろとあった人生だったな……。



――――――――――。



産まれてから小学校までの記憶へ。つづく。

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