第18話
それは少年がある人物と一心同体となったことから始まる。少年は再び真っ暗な闇の中に位置していた。周囲に光は無く、少年の赤くなった目が周りを照らしていた。
「またここに来たか・・・・・・」
少年はそのつぶやきの跡に自身の赤い目が目の前の人の形をしたものを照らしていたことに気づく。少年は少しずつその姿を視認することができた。目の前に見える人物は少年が妹分のようにかわいがっていた少女であった。遠い前に妹と離れ離れになり、家族と呼べるものが皆無の状態の中で、その少女は少年の大切な家族のようなものであり、重要な生きがい、そして糧でもあった。そんな少女が少年の目の前で何かによって縛られている。
「おい!大丈夫か!俺の声が聞こえるか!?」
少年がそう少女に叫んだ。すると少女から
「あ・・・・・・あ・・・・・・」
という死に絶えそうな必死の声が聞こえた。よく見ると少女は深い傷だらけで今にも死にそうな状況であった。それを見た少年はその少女の消えそうな声に驚き打ちのめされそうになってしまった。少年は少女を縛るその黒い影に対して必死に叫ぶ。
「おい!てめえ妹に何をする気だ!?ぶっ殺すぞ!」
黒い影は少年のその叫びに微動だにしなかった。黒い影は少女を包み込み締め付けていく。すると上からまた別の人物の声が聞こえた。
「オマエノ・・・・・・テキハ・・・・・・ダレダ・・・・・・?」
その声を聴いた瞬間、少年ははっとした。少年はそれですべてを理解したような気になった。
「お前はもしや『アイツ』か・・・・・・次はその妹を俺から奪おうって気か・・・・・・そうやってお前が俺のすべてを奪う気なら・・・・・・俺は容赦しねえ・・・・・・俺はお前の息の根を全力でとめてやるッ!」
少年はそう言って黒い影を掴むと少女は徐々に黒い影に飲み込まれていく。少女は必死で少年に対して消えてしまいそうな声で
「タスケテ・・・・・・」
と言ったのが少年には強く響いた。少年はしがみつく様にしてその黒い影を掴むとそのまま黒い影によって飲み込まれてしまった。少年はそれからしばらくの間意識を失った。その後、気付いた時には少年は酒場に居た。すると少年の意思もなしに少年は酒場の店主へと向かった。酒場の店主の裏にはあの少女の声が微かに聞こえてくる。少年の耳は別の人物と一心同体になってからとても小さな音が聞こえる程に感度が良くなっていた。少年はその耳で、あることを確信した。少年は酒場の店主にあることを聞こうとしたが、その瞬間少年は別の人物によって奇妙な言葉を発せさせられる。
「オマエガ・・・・・・アルバンカ・・・・・・?」
すると少年は彼の意思に反して店主の首を掴んで絞めた。少年はそれにびっくりして脳内で身体を共有する別の人物に問いかける。
「なんでそんな事をするんだ!」
その人物は彼の問いかけを無視した。脳内でのその人物の占有率は次第に高くなっていき、少年の意識は遠のいていく。
「やめろぉっ!・・・・・・やめてくれ・・・・・・」
少年がそう訴えてもその人物が反応することは無かった。少年の体は少年の意識かっら遠い存在に置かれ、それは酒場の店主を殺したり、火炎魔法で酒場を焼き討ちにしたりする等、少年の命令から逸脱した残虐な行動をとり始める。少年の意識は塵のように薄く、遠のいていったが、唯一感覚だけが少年へと伝わっていた。その中でも痛みは強烈なものであった少年とその人物による意識のと体の融合による副作用によって体の節々が壊死し始め、それがより強烈な痛みによって少年へと返ってきていた。少年の体を占領しているもう一人の人物はそれを痛みっと感じないのかそれによってうろたえる姿を見せず縦横無尽に暴れまわっていた。その人物によって少年の体が複数の人間を一気に殺害する様子は少年が経験した過去のあの事件をも催すものであった。そんな中でもう一人の人物は酒場の中の大殺戮を終え、少年の口を使ってこう発した。
「ココニモ・・・・・・イナカッタカ・・・・・・」
その人物がそのような低音で歪な音を発した後、後ろから人のような形をした影がこっちに近づいてきた。僅かな視覚でそれに気づいた少年は何を思ったのか残された僅かな力を使って別の人物に乗っ取られた体を取り戻そうと少しずつもがいた。体を利用していた別の人物は必死で抵抗したが、少年の意思に力には勝てなかった。そうして少年はようやく体を取り戻したが、時はすでに遅く、身体の全部分が壊死をしていた。少年がこちらに近づいてくる人物に対してできることはわずかであった。
「タス・・・・・・ケ・・・・・・テ・・・・・・」
体の隅々まで変わり果てた少年はその死に絶えそうな声を口にして倒れた。その時にはもう近づいてくる人の形をした影が何なのか、何を言っていたのかもわからなくなってしまっていった。
少年はそのあと静かに瞳を閉じた。
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