第2章 旅人たち

1 旅行者

 館長は、しばらくじっとしていたが、やがて、そっと図書館を出ると、どこかへ行ったようだった。

 そして、それきり、彼の姿を見たものはいなかった。


 次の日。

 リダンは、早起きをした。気がはやって、一刻も早く、図書館へ行きたかった。一人で行こうとすると、外に、誰かが待っていた。

「ユティじゃないか!」

「わたしもつれてって。でも、どこいくの?」

「気分は落ちついた?」

「ええ」

「図書館へ行くんだ」

 ユティが、後ろから、さっと何かをかけてくれた。

「これ着てたら。もらったんでしょ」

 それは、ラーベスのくれたマントだった。

「あなたが、一番にあうと思うの」

 リダンはそれを着て、二人は出発した。

 マントは、元気よくひらめく。

 リダンは、ちょっと困っていた。このマントは、旅行者しか着てはいけないんじゃないかと思ったのだ。

 彼は、旅に出るかどうか迷っていた。何と言っても、自分が消えてしまうのはこわかったし、ラーベスも、旅に行くかどうかは君の自由だ、と言ってくれた。

「リダン、そのおひげ、そらないの?」

 リダンは、ユティの方を向いて言った。

「このひげ、そんなに気になるかい?」

 ユティは、笑っただけで、だまってついてきた。

 そして、図書館に着いた。

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