4 手紙
次の日。
ラーベスは遅く起きた。
食事もそこそこに、図書館へと行く。
「やあ、ラーベス。来ると思ったよ。きのう帰ったね」
「ええ。ロームジィさん」
ロームジィは、この図書館の館長で、近くにある博物館のトムリィ女史と共に、ルウィンラーナきっての物知りであった。
さて、ラーベスとロームジィ館長は、今度のラーベスの旅について話し合った。
ラーベスは、旅で起こったこと、特に嵐の日に、自分の頭にかぶさってきた、あの手紙のことを話した。
やがて、話は、レムルのことに移っていった。
みなさんは、レムルという小びとを知っているだろうか?
レムルは、ラーベスが旅に行く時に着ていったマントの、もとの持ち主。
今はもう、ここにはいない。
レムルは、旅から帰ると、そのことを『旅行記』という本に書いた。館長は、その本をもとに、レムルの旅のことをラーベスに一通り話したのだが、それは別の機会に皆さんにお話ししよう。
「……というわけだ。これはレムルが書き残した本だが、ここにはちゃんとルーンのことが書いてある。彼は知っていたんだ。しかし、木の姿をしているとは書いてないな」
「レムルは、旅から帰って、その後どうなったんですか?」
「消えた」
「消えた?」
「そうだ。わしの目の前でだ。煙のようにすっとだ。『まず『黄金律』を調べてくれ』これだけ言ってな。くやしかった。それからだよ、わしがこの図書館の本を調べるようになったのは」
「『黄金律』って、あの予言の本ですね」
「そうだ。わしの調査によると、こいつの中に「原旅行者」とあるのが、どうやらレムルのことらしい。彼は自分で気づいていたのかな」
館長は、ふうと一息ついた。
「 "旅行者"は、われわれルウィンの中では変わり者だよ。自分から危険を求め、外へ出ようとするんだからな。レムルのあと、久しく旅行者は途絶えるんだが、やがて三人の旅行者が出て、ハーツ季は終わる、と書いてある」
「へえ」
「そこでだ。いいかい。重要なのは、君が旅をしてきたという事実だよ。君は、原旅行者に続く三人の旅行者のうちの最初の一人、つまり、第一の旅行者ということになる」
「まさか」
「この本ではだ。また、この三人が出るころ、変わったものが現れてくることになっている」
「それは、何です?」
「ニンゲンと呼ばれるものだ。君は、こういったものを見たか、聞いたかしなかったかね?」
「いいえ」
「ふうん。すると、わしの解読はまちがったかな」
「それで、ハーツ季が終わったあとは、どうなるんです」
「何も書いてないさ。『黄金律』はここで終わってるんだ。この本は、そう長いものではないから、わしは図書館中、この先の未来を書いた本を探したが、一冊もなかった。それは、博物館のトムリィ女史も同じさ。ずいぶんかかったぜ」
「ニンゲンって何でしょう?」
「わからない。生き物なのか、物体なのか」
「原旅行者のレムルは、旅から帰ってすぐ消えたんですか」
「いや。四日後だ。さよう、ちょうど四日後だった。君がきのうまで着ていたマントだけを残してね……。まあ、レムルのことはもういい。さあ、その手紙とやらを見せてごらん」
「これです。嵐の時、いきなり顔にはりついて来たんです」
ロームジィ館長は、その手紙を受け取って見つめた。
「ん……これは古体字の単語だな。1、2、3……24行ある。これは、トエフリクだ」
「トエフリク?」
「24行詩のことさ」
「意味はわかりますか」
「さっぱり。そこで、トムリィ女史の登場さ。さ、博物館へ行って、呼んで来てくれないか。彼女の協力があれば、今日中に解けるかもしれんよ」
ラーベスは、急いで博物館へと行った。
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