第2話

「あれ...?」


気が付くと、全く知らない場所にいた。


「死んだ筈なのに…」


辺りを見回すと、草木が生い茂っており、まるで山の中に居るような感じだ。


どこだ...ここ...


少し辺りを散策する。

幸い、獣道のようなものが続いているので、そこを進む。



「キシェエエ!!」


急に上から、鳴き声のようなものが聞こえてきた。


鳴き声が聞こえた方向へ顔を向ける。


するとそこには、巨大な生物が空を飛んでいた。


巨大な翼に、2本の肢。それはワイバーンを想像させる。


あんなでかいモン、地球に飛んでるなんて聞いたこと無い。


「……」


ふと、死ぬ前の事が頭をよぎる。


(死んだら異世界とかに転生したりするのかな)



異世界?まさか... でもワイバーンみたいなの飛んでるし…


..........


「ってえええええええええええ!?まじか!まじなのかあああああ!」


俺は結構異世界に行ってみたかった人間である。

ラノベとかを読んで、異世界行きてえなぁ、なんて思う事が多々あった。


まさか、本当に行けるとは思ってもいなかった。


テンションが猛烈に上がる。


異世界転生に興奮していると、


カサカサカサ


と、草むらから音が聞こえた。


音のした方向に視線の先を向ける。


するとそこには緑色の皮膚に、涎を垂らした人型の生物がいた。


あれも見たことがある。


ゴブリンってやつだろう。

体長は90cm程。


ゴブリンは俺を見つけるなり、物凄い形相で襲いかかってきた。


ゴブリンの持っている木製の棍棒で殴られそうになったが、ギリギリで躱す。


危ねえ...


ラノベとかアニメでは、こういうピンチの時に、自分のの秘めたる力が湧き上がってきたりする。


俺にも秘めし力があるんじゃね?


「出でよ!俺の秘めし力!」


はあああああああああっ!!


俺はゴブリンに対し、思いっきり殴り掛かる。



するとゴブリンがものすごい勢いで飛ばされていった…





...りはしなかった

むしろ、敵意を剥き出しにしたゴブリンは

「ギィイイイイ!!!」

と耳をつんざくような奇声を発した。


俺はゴブリンが何をしたのか分からなかったが、時が経つにつれてその答えが分かってきた。


それもそのはず、俺の目の前にどんどん緑のヤツが近付いてくるではないか。


20体位は居るのではないだろうか。


(あれ?これってもしかしてやばいんじゃね!?)



そう思い、俺は急いで逃げる。



しかし、俺は長い間引き籠りをしていたせいか、すぐ疲れてしまい、どんどん走るスピードが落ちてくる。


こういう時、誰か助けてくれたりするんじゃねーの!?


しかし、誰も助けてくれない。


「アー!クソッ!」


精一杯の抵抗として、ゴブリンに再度殴りかかる。


しかし、ゴブリンはビクともしない。


そのまま、ゴブリンに殴られる。


痛い、痛い、痛い、痛い


身体中が腫れ上がり、所々出血もしている。


俺は体の力がふっ、と抜けていくような感覚に襲われ、そのまま倒れてしまった。



気が付くと、見た事ない天井が目に入る。


起き上がってみるがどこも痛くない。


取り敢えず助かった事は確かだ。




そんな事を考えていると、一人の綺麗な女の子が部屋に入ってきた。



髪はショートで、綺麗な赤い色をしている。目は若干つり目でキリッとしていて、スタイルも良い。身長は160くらいだろうか…


取り敢えず...可愛ええ。


どストライクです。



俺が女の子に見蕩れていると、女の子が言う。


「具合はどうだ?大丈夫か?」

「え、ええ...」

「そうか、それは良かった。それじゃあ、少し部屋で待っていてくれ。私が戻ってくるまで部屋を離れるなよ」

「は、はい」


助けてもらったので、ここは大人しく従う。


言葉が通じるのは、そういう設定なのだろう。



30分くらい経った。


またガチャッ、っとドアが開く。


そこには、老人と一緒にさっきの女の子がいた。


老人は、白髪に白く長い髭。いかにも、異世界にいそうな老人だった。


「大丈夫か?ゴブリンに運ばれていたからたすけたのだが...一応ちゃんと治療はしてあるぞ」



「こんな赤の他人を助けてくださりありがとうございました!お陰で助かりました!」


取り敢えず、助けて頂いたのだから、感謝だ。


「良いのだ」

すげえやさすぃ。


「取り敢えず腹が減っただろう、ここにパンとスープがあるから食え」


そういえば、部屋に入ってくる時木の皿やパンの乗ったお盆を持っていた。


「大丈夫だ毒は入ってない」


まあ、俺を殺す気なら助けたりしないだろう。


「ありがたくいただきます」


スープは薄味だが、怪我人には丁度いい。

パンも硬くなく美味しい。


「美味しいです」

「そうか。良かった」


というか、自分的にはさっきから女の子の後ろにいる老人の方が気になる。


そんなことを考えながら、女の子の出してくれた食事を食べた。

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