不登校児と一緒

@abutenn

説得(好感度、新愛値すでにMAX)

第1話 谷間は良い。深淵を覗いているようだ

「これはこれは、本日もご足労いただき、ありがとうございます」

 小林葵は、黒いパンツスーツを着て、きちんとした化粧をした上で、俺のことを向かい入れた。

 葵のパンツスーツ姿は、認めたくないがとてもよく似合っていた。よく訓練された営業スマイルをしていて、十個上に年を言ってもそれで通じるだろうと思った。

「お前、わざとやっているだろ?」

「うん」

 俺は、高校の制服を着ていて、一方の葵は、スーツを着ているが年上ということはない。ましてビジネスパートナーということでもない。こいつは、高校の同級生だ。

「はい、今日のプリント」

 俺はとりあえず、カバンの中からクリアファイルを取り出すと、葵に押し付けた。

「じゃ、帰るわ」

 きびすを返して帰ろうとすると、葵が腕に抱きつかれた。

「待ってよー。帰るなよー、勉強教わってかない? 教わってかないの? お兄さん有益な時間を無駄にするよ? 無駄になっちゃうよ?」

「なら学校来いよ!」

「それはヤ!」

「俺と一緒にいる時間をただ単に増やしたいなら学校来いよ。そうすれば、こうして来る見込みがないお前んところにわざわざプリント届けに来なくても良いわけでさ」

「それは絶対にヤ! 学校行かなくて、太一がプリント届けてくれる生活がいいのー! わかってよ! わかってくれないなら怒るから! プンスカー!」

「もうすでに怒ってるし。どうしたら良いのよ」

「それでも帰らないから、太一のこと好きよ。私がこうしてゴネて話を聞く構えを見せた時点であなたの負けは確定していたのだー!」

 帰ってしまえばよかった。

「座って座って、お茶いれてくるから。お茶置くときに胸の谷間が見えるようにしておくから、ちゃんと確認するんだよ」

「そういうの良いから!」

「はいはーい」

 そう言って、葵はキッチンへとパタパタ走って行った。

 どうせ葵のことだから、胸の谷間にすごく細い監視カメラでも仕込んでおいて、次に来た時に『みてみて太一ー! 太一、めっちゃ私の胸みてる! 谷間に視線がバキュームされているよ!』などとのたまうのは間違いないだろう。

 こうして、葵から仕掛けられる罠にことごとくひっかかっては、後日葵から《ハニートラップに引っかかった太一くんの反省会》が実施されることになる。何度もやられて慣れてきたが、意識しないようにすると逆に、何かとてもエロいものをこっそり見るような空気が出てとてもまずいことになる。

 必要なもの、それは無である。

 何もかもそこにあるということは認めた上で平等に扱う、無我の境地。これこそ必要なのである。

 それか思いっきりガン見するかどっちかにしよう。そうだ、今回はあらかじめ予告されていることだ。見てくれと言っている、そしてどうせ監視カメラが仕込まれているに決まっている。

 ならば、見る。

 堂々と、正面から、まっすぐな眼差しで、葵の胸の谷間を見る。とても見る。

「おまたせー」

「おう」

 葵は、予告通りに、ワイシャツの胸をややはだけさせた状態でやってきた。

 俺は、葵がお茶を置くとき、一切胸の谷間から視線を動かさなかった。対面に座ってもただひたすらに胸の谷間を見た。

 葵の胸は、爆乳と呼べるほどに巨大なものではなかった。だが、寄せてあげれば、そこに確かに谷はできる。できるのだ。

 じっくりと、美術品を観察するように葵の胸を眺め続けた。

 まず、白磁のような艶やかさ。次に、思わず触れたくなるような肌の質感で弾力があり、ブラジャーの無理な拘束に反発するかのようであった。そして、ブラジャーのすこし上のあたりに小さなホクロがあった。それが抜群に存在感をアピールしている。まるでここを狙えと示されるように。そこに向かって突き進めと言われているような感じさえしている。

 どうしたというのだ。そうだ葵の体はいちいちエロいのだ。身長は一七〇ぐらいあってモデルみたいに手足が長くて、ふくらはぎから足首にかけての曲線美は芸術的と言っても過言ではない。けれども、ふとももは柔らかそうで、尻は意外にも安産型。この両立しえなさそうな要素が一緒にいるの凄い。そしてウエストは締まり、バストは今確認した通りだ。

 肝心の顔だが、とてもきれいだと思う。

 かわいいというよりもきれいな顔立ちで、鼻は高く目はやや切れ長な二重、肌は白く、黒い髪は今はアップにまとめられているが本来は腰ぐらいまでの長さがある。個人的にはこれをポニーテールにした時は素晴らしかったと思う。

「ちょっと、……そんなに見られると……」

「うっせぇ! 俺はお前の胸の谷間ガン見してんだよ! 邪魔すんなおら」

「み、見てねとはいったけど! なるほどそう来ますか、反省会楽しみにしておいてね」

「それを分かった上でガン見してるから大丈夫だよ。襲わないから安心してね」

「ああ、うんそれは、うん分かっているんだけど。私の方が強いし」

 葵に、下から極められたことがある。

 ある日「襲っていいよ」と言うから、ドキドキしながら襲ったら、三角締めの練習台にされたことならある。

「ふう、満喫した。で? なんだっけ? 俺もう帰っていい?」

「だから帰らないでってば! 勉強するんでしょ? ね?」

「そこまで言うなら、仕方ないなーもう」

「勉強、勉強♩」

 しぶしぶカバンの中から、教科書や筆記用具などを取り出していく。

 これから勉強を教える葵は、とても楽しそうにしている。ただ、葵はそもそも不登校児だった。それで、俺は毎日学校のプリントを葵に持ってきて「学校に来いよ」という係なのだった。

 数ヶ月前に、俺が、テストで赤点をとったことが葵にバレて、それから葵が、俺に勉強を教えてくれることになった。葵は、学校来てないのに俺よりも成績がいい。なんて才能の格差でしょう。

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