ド底辺ゲーム企画者は伝説の勇者の夢を見るか?

八門月徒

プロローグ

第1話

いつの時代なのか、どこなのか、どの季節なのかも分からない。 


 薄暗く窓もない、埃っぽい部屋。

 その部屋の1箇所しかない出入り口は鉄格子になっており、扉には頑丈な鍵が掛かっている。余人が見れば何者かを閉じ込めておく座敷牢のような印象を受けるに違いない。

 ただ、中に閉じ込められている人間は見当たらない。

 調度の類は一切見受けられない。石造りの床には複雑な模様と文字が緻密に描かれ、模様自体がぼんやりと青く光を放っている。

 部屋のすぐ外は上に続く階段になっている。


 その階段の上の方から足音が響き、やがて大小二つの人影が鉄格子の前に立ち、中を伺う。

「とりあえず、今日の所は異常はないみたいね」

「…うん」

 年齢の差こそ感じるがどちらも女性の声。会話の調子からは特に緊迫した空気は感じられない。

「そろそろ2ヶ月?今回は結構長くもってるね」

 小さい人影が抑揚のない声が大きい人影に話しかける。

「そういう失礼な事は、絶対に本人の前で言っちゃダメだからね」

 話かけられた人影は窘めるような口調で言葉を返す。

「あんたはそういう不躾なとこを早く直しな…えっ?」

 続けて説教じみた言葉を続けようとした瞬間、床の模様からバチバチと言う音と共に火花が上がる。

 音と火花はどんどん激しさを増し、


ぼむっ!


 小さな爆発音を最後に静寂が訪れた。

 二人は恐る恐る部屋の中を覗き込む。

 見た感じどこか壊れた箇所は見受けられない。ただ、爆発音がする前までは青く光っていた床の模様が赤く光っているのが、強いて言うならば変化と言える。

「今回のゆーしゃ、死んじゃったみたい」

 その様子を見て、小さな人影は爆発前と変わらず抑揚のない声で大きな人影に話しかける。

「はぁ…」

 大きい人影はそれに答えず、落胆の気持ちを隠さない大きなため息をついた。

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