総角 その八十三
中の君からは人目も多いし出立の直前の騒ぎの中では迷惑だろうからと返事はない。
中の君は落ちぶれた人数ではない身の上で貴い人と付き合うのは所詮甲斐もないことなのだとしみじみ身に染みて思い知らされるのだった。遠くて離れて逢えず、過ぎてゆく月日は来てもらえないのも仕方のないことだと思っても、それもまさかこれきりではないだろうと自分で慰めているのにこんな近くで賑やかに遊びながら素知らぬ顔で帰ってしまうのはひどいとも口惜しいとも心が千々に乱れて悩む。
匂宮はなおさら限りなくやるせなく辛くてならない。網代の氷魚も匂宮を慕ってたくさん獲れたので色とりどりの高揚の葉に載せて賞味するのを下々の者などはとても風情があると喜んでいる。人それぞれに満ち足りた顔をしているのに、匂宮一人は悲しみに重く塞がり、空ばかり仰いでは嘆息しているのだった。
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