総角 その七十七
京にも中の君を隠して移すような家はさすがにおいそれと見当たらない。
六条の院には夕霧の右大臣が住んでおり、あれほどぜひにと右大臣が望んでいた六の君との縁談に匂宮が気がないので多少は恨んでいるようだ。匂宮を浮気っぽい振舞いだと手厳しく非難して帝や中宮にも訴えている様子なのだ。そんなところに中の君のような世間の支持のない人を宇治から連れ出して北の方として迎えるのはますます六条の院にも宮中にも差障りが多い。それも一通りの浮気の相手なら宮仕えさせるという方法もあり、かえって気が楽なのだ。ところが中の君に対してそんな並々の気持ちではないものだからもし御代が替わってかねて帝や中宮が考えていた通りに自分が皇太子にでもなった暁には中の君を誰よりも高い位に据えようなどと思っているのだった。ただ当面のところは中の君を愛しているままにさしせまって今どのように扱っていいのかどうしてあげることもできず、途方にくれているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます