総角 その七十四
匂宮を山里としては精いっぱいにおもてなしして迎え、薫の君のほうは主人側として気の置けないおもてなしをするものの、まだ臨時に設けた客間に遠ざけておくので薫の君は何と冷たい扱いをするものかと不満に思っている。そう恨んでいるのもさすがに気の毒になり、大君は物越しに対応する。
「会わずにいれば冗談ごとでなく恋しさがつのり、もうたまらないのです。いったいいつまでこのままでいよとおっしゃるのですか」
とひどく恨み言を言う。大君も次第に男女の仲の機微もわかっているが、中の君の身の上について匂宮との仲をとても心配していて、ますますこうした結婚とか恋愛とかいうものを嫌なものだと見限り、
「やはり私は妹のように一途に男君に身も心も明け渡すようには何としてもなりたくない。今は心惹かれるこの人だって夫婦になってしまえばきっと恨めしく辛いこともあるに違いない。こちらも向こうもお互い相手に幻滅したり裏切ったりしないで終わりたいものだ」
という考えがしっかり固まるのだった。
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