総角 その十七

 眠りこけていた女房たちはやはりこうなったのかと二人の様子を察してみんな奥へ下がってしまった。父宮が生前言ったありさまなどをお思い出すと、いかにも生きていれば自分の心に反してこうした思いもよらない不甲斐ない目にもあわなければならないものかとひたすら悲しくて宇治川の川音に誘われて涙が流れ添うような気がする。


 そのうちにいつの間にか夜明けになっていた。お供の人々が起きだして咳払いして出発を促している。馬の嘶く声などに誰かに聞いた旅の宿駅の朝の様子などが思いやられて興味深く感じた。


 朝のひかりの差し込む障子を押し開けて黎明の空の胸にしみる景色を一緒に見る。大君も少しにじり出てきたが、いくらもない軒の浅さなので軒先のしのぶ草に置く朝露も次第に朝日に輝いてくるのが見えてくる。二人とも何とも言えないほどあでやかで美しい器量を互いに見ながら、薫の君は、



「こうして何と言うこともなくただ月も花も二人で同じ気持ちで楽しく眺めたりはかないこの世の無常をお互いに話し合ったりして暮らしたいものですね」



 ととてもやさしい様子で話しかけるのだった。

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