椎本 その十八

 まだ夜の明けきらないうちに薫の君は宇治から帰った。八の宮がもう余命も長くはあるまいと心細そうに思いだった様子を思い出しながら、何かと忙しい節会が終わったらきっとまたうかがおうと思う。


 匂宮もこの秋ごろには宇治に紅葉を見に行こうと考えて、何かいい口実はないものかと思案を巡らせていた。


 手紙は絶えず宇治に差し出している。姫君のほうでは匂宮がそう本気で考えているとも思えないので、うるさいとも感じず軽く付き合うといった態度で時たま返事を書いているのだった。

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