椎本 その七

 山里にふさわしいもてなしをいかにも風流に支度していて、よそながら想像していたのとは違い、どうも皇族の血筋といった見るからに高貴な方たちがたくさんいる。また四位で年をとった孫王のような上品な方々もかねがね八の宮に同情したとみえ、こうした来客のあるような折にはと三宅ゆかりの人々が皆こぞって集まっている。


 お酌をする人たちもこざっぱりしていた。こうした由緒ある宮家らしく万事古風でいかにも雅趣のあるおもてなしをする。


 客たちには姫君たちの暮らしになっている日常を想像しては心を惹かれる人もいることだろう。


 川向こうに残っている匂宮はまして気軽にふるまえない身分をさえ普段から窮屈に思っているので、せめてこうした折にでもと気持ちを抑えかねて美しく咲いた花の枝を折らせて、お供の殿上童の可愛らしいのを使いに出すのだった。

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