竹河 その三十七

 蔵人の少将はいつもの中将のおもとで、辛い気持ちを言葉の限り書き連ねて、



「今はもうこれまでの命と覚悟していたのですが、さすがにやはり悲しいのです。せめて『可哀そうに思う』という一言だけでもおっしゃってくださいましたら、そのお言葉を頼りにして、今少しでも生きられるかもしれません」



 などとあるのを中将のおもとが姫君の傍に持っていくと、姫君が二人で話しながらふさぎ込んでいる。昼も夜もいつも一緒に仲良く暮らしていたので、中の戸で隔てられた西と東の部屋に分かれているのさえとても鬱陶しく思い、互いに常に行き来していられるのに、これからは別れ別れになることが悲しくてならない。


 今日はとりわけ念入りに美しく化粧して着飾っている大君の様子は、輝くように美しく見えた。亡き父大臣の遺言などを思い出し、しんみりと感傷的になっていたからだろうか、蔵人の少将の手紙を手に取って見てみるのだった。

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