匂宮 その十三
こんなふうに中将の君は怪しいまでに人の心をそそる芳香が身に染みているのを兵部卿の宮は他のことよりもことさら対抗意識を掻き立てられて、こちらはまたわざわざいろいろ優れた名香を薫きしめたり、香の調合を朝夕の仕事として熱心にはげんだりしている。
庭の草花にしても、春は梅の花園を眺め、秋は世間の人がもてはやす女郎花や小牡鹿が妻にすると歌われている萩の露などにはほとんど興味を示さず、すべての人が老いを忘れると言われると聞くや衰えていく藤袴、見栄えのしない吾木香など、香りのあるものはすっかり見る影もなく霜枯れになるころまで見捨ててはならないというふうでことさららしく、香りに執着なさる趣味を外に見せびらかして風流がっていた。そういうことで兵部卿の宮は少し軟弱で、趣味に耽溺しすぎると世間の人々は思い、噂していた。
昔の光源氏は、何につけてもこんなふうに何か一つのことに取り立てて執着して異様なまでに夢中になるということはない人だった。
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