夕霧 その一〇六
洗面や朝の食事などはいつもの居間のほうで差し上げる。
喪中の黒っぽい部屋の飾り付けは縁起が悪いようなので西廂の東側に屏風を立てまわして隠し、母屋との隔てには香染の几帳など、あまり大げさに喪中らしく見えないものを置き、沈香の二階棚などを配して新婚の朝らしく気の利いた部屋飾りをしてあった。
すべて大和の守の指示したことだ。女房たちもそう派手やかでない色の山吹襲、紅色襲、濃い紫の衣装や、青鈍色などに着替えさせて、薄紫や青朽葉色などの裳を喪中とは見えないように着せて食膳を差し出す。女所帯なので、これまで何とかしまりなく過ごしてきた宮邸だったのに、体面に気を配って数少ない召使たちもうまく使いこなして大和の守一人が取り仕切っていた。
こんな思いもかけない高貴の通い人がいると伝え聞いて、以前は怠けて出仕もしなかった家司なども手のひらを返したように急に参上して事務所に詰めて仕事にはげむのだった。
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