夕霧 その九十四

 夕霧が光源氏の前に参上すると、光源氏の方では例の話は聞いているが、何も知った素振りをする必要もないと思い、ただ黙って夕霧の顔を見る。夕霧はいかにも立派で美しくちょうど今が男盛りの絶頂ということだろう。そうした色恋沙汰を起したところで人から非難されるような様子ではなく、鬼神だって大目に見て咎めはすまいと思われるほどすっきりと水際立ち、若々しく今を盛りの美しさと魅力をあたりに振舞いている。また無分別な若者という年ごろでもなく、どこと言って欠点もなく整いきった姿でいるので、



「これならなるほど無理もない。女なら誰だってどうして引き付けられずにおられようか、自分で鏡を見ても美男ぶりに得意にならずにはいられないだろう」



 と自分の子どもながらそう感じるのだった。

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