夕霧 その八十三
女房たちが集まってみんなしてなだめすかして言うので、女二の宮は本当に困ってしまい、女房たちが色華やかな美しい着物に着替えさせる間も半ば呆然としている。
やはりどうしてもひたすら削ぎ捨ててしまいたいと思いつめている髪を脇に描きだしてみると、長さは六尺ばかりもあり、少し毛が抜け減って補足なっているけれども、女房の目には見事としか見えない。ただ女二の宮自身の気持ちとして、
「何というやつれようだろう、とてもこれでは男などに会える姿ではない。どうして私はこんなふうにいろいろと辛く情けない身の上なのだろう」
と考え続けて、またその場に臥せってしまった。
「予定の時刻が過ぎています。早く出ないと夜も更けてまいりましょう」
と女房たちは騒ぎ立てた。折から時雨がひどくあわただしく風とともに吹き付け、何もかもうら悲しく感じられるので、
のぼりにし峰の煙にたちばじり
思はぬかたになびかずもがな
と詠むのだった。
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