夕霧 その六十九

「それだ。それこそあまりに頼りない。不甲斐ないお心です。畏れ多いことだが、今となっては誰をお力になさるおつもりなのだろう。父朱雀院のお住まいなさるのもとても深い山の中で、俗世のことはすっかり断念なさった雲の中のようなお暮しだろうからお手紙のやり取りさえも難しい。まったくこんなふうな実に情けない私への冷たいお仕打ちをあなたからよく女二の宮にご意見申し上げてください。何もかも前世からの宿縁というものです。この世に生き永らえていたくないと思ったところで思い通りにならない世の中なのです。何でも思い通りになるのならまず第一にこんな御息所との悲しい死別などあるはずありません」



 などとさまざまに言葉を尽くして言うのだが、小少将の君は返事の言いようもなくてため息をつきながらひかえているのだった。

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