夕霧 その六

 夕霧は、



「こちらにお移りになられました時のお供もぜひさせていただきたいと存じましたが、あいにく六条の院から申し付けられた用事が片付いていない時でしたので参れませんでした。常々から何かと忙しい雑事にかまけてしまってこころでお案じ申し上げているほどには充分のお世話もできませず、ずいぶん不行き届きな者とお思いになっていらっしゃるだろうと、それが心苦しくてなりません」



 などと言う。


 女二の宮は奥のほうにひっそりと隠れているが、何分ちょっとした旅先の仮住まいのような簡略な設備なので奥といってもたいして深くはなく女二の宮の御座所はすぐ近くらしくて、その気配は自然にありありと夕霧に伝わってくる。


 ひそやかに身じろぎする衣装の衣擦れの音なども、ああ、あれが女二の宮なのだろうと思って夕霧は聞き耳を立てているのだった。

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