夕霧 その四
八月の二十日ごろなので、野辺の秋景色もちょうど美しい折から小野の山里もどんな様子かといっそう心を惹かれるので、夕霧は、
「某律師が珍しく山から下りて来られたようなのでぜひ会って相談しなければならないことがある。御息所がご病気だとのことだからお見舞いがてら行ってこよう」
と何でもない訪問のように言いつくろって出かける。前駆も大げさでなく、腹心の者ばかり五、六人ほどが狩衣姿でお供した。
たいして山深い道でもなく、松ヶ崎の小山の色などもそれほど険しい岩山でもないのに、さすがに秋めいた気配が加わっている。都の内にまたとないほどの数寄を凝らした邸宅よりもこの山荘は何といっても風流さも風情の深さもたちまさっているように見えた。こちらはささやかな小柴垣も味わい深く趣向を凝らしてあり、仮の宿なのに品よく住んでいる。
寝殿と思われる建物の東の放出に祈祷のための壇を塗り固めて、御息所は北廂の間を病室にしていた。女二の宮は西面の部屋にいるのだった。
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